安部:品質とコストへのこだわりはそうだと思います。当社は明治の時代に石鹸を作り始めたのですが、当時の国産品は質があまり良くなくて、顔を洗うとピリピリとしてしまう石鹸が多かったらしいです。高級な輸入品はそうならなかった。高級輸入品と同じ、あるいはそれを超える品質の石鹸を作ろう、というのが当社の始まりだったそうです。

日高:品質へのこだわりが非常にある。輸入品の石鹸は高かったのですか。

安部:値段は忘れましたけれど国産品の10倍ぐらいしていたはずです。高品質な石鹸を当時の国産品と同じか、ちょっと高いぐらいの値段で提供しようと考えた。コスト意識も当時からあったわけですね。

エコーシステムをどう発展させるか

日高:売り上げを伸ばすにあたって、ITやデジタル技術を使っていくことになると思いますがどうでしょう。

安部:我々が扱っているのは情報財ではなくて消費財が主です。ですから、物がきちんと消費者の皆さんの手元まで届いて、使っていただいて、そしてもう1回買っていただいて、成り立つ商売です。

 課題の一つは、消費者の方に我々の商品の価値を伝えていくときに、デジタル技術をどう使うかですね。これまではテレビのコマーシャルが中心でしたから。

日高:お客様との関係がITの力で変わっていくでしょう。お客様自身のITを使う力がどんどん上がってきて、より自分にとって居心地のいいインターフェースを求めてきます。場合によっては将来、VR(仮想現実)の体験まで求めてくるかもしれません。

 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)でお客様と対話したり、世の中の知識を吸い上げたりするところも大事です。そのあたりはいかがですか。

安部:正直、まだあまり手を付けていないというか、遅れていますね。消費者の皆さんからお問い合わせをいただく、相談のシステムには随分前から取り組んできて、エコーシステムという名前で結構、認知していただいています。ただし、どうしても電話が中心のシステムでした。

 電話に加え、SNSですとか、あるいは電子メールからのお問い合わせがとても増えてきています。それらをうまくまとめていくわけですが、まだ人手でやっているところもある。そこをどうするか、次の課題として取り組んでいます。

日高:新しい販売チャネルとしてeコマースはどうですか。

安部:現在、自社のeコマースとしては廃止品というのか、なかなか手に入りにくい商品を若干手がけている程度です。多くはアマゾンさん、楽天さんの中にショップをつくらせていただいて、そこから販売する。あるいは流通業の皆さんが自分で取り組んでいるeコマースの中に当社の商品を置いていただく。国内はそういうやり方ですね。

 eコマースの初期のころは、従来からの販売チャネルを大切にしようと、気を使っていたのですけれども、最近は流通業の皆さんご自身がどんどんeコマースに進出されています。海外展開もされているので、昔とは様変わりしましたね。中国ですとアリババさんの中にショップをつくらせてもらっています。いくつかのeコマースベンダーさんとも取り引きをしていて、eコマースの比率が増えてきているのは事実です。

-「後編」に続く-

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