自動化できる仕事はまだまだある
日高:さらに労働生産性を上げるためにITで業務を自動化する。場合によってはAI(人工知能)も使う。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というやり方が注目されています。このあたりはどうですか。
安部:自動化できる仕事は今まで以上に増えています。例えば基本の基本と言える仕事として売掛金の入金処理があります。8割ぐらいまで自動化できていますけど、残りの2割はやはり人間が関与して、これとあれがこうつながるだろうと、ひも付けしている。そのあたりにAIなのかRPAなのか、そういった技術が使えそうです。
日高:花王が興味を持つ技術はやはりAIでしょうか。
安部:我々は「きれいにすること」が生業です。そのために一個一個の物としての機能を高めてきました。ただし、きれいといっても、物理的なクリーンという場合と、衛生や医薬の世界のそれとは違います。より広義の「きれいにすること」にどのような技術が使えるか、考えているところです。ここならAIは使えるね、でもロボティクスはちょっとないかな、といったように。
日高:さっきのKPIもそうですが、花王さんは数値で物事を把握し、モデルを作り、仮説を立て、こういう風にしていけば、きっとこうなるだろうということを実証しながら経営をしてこられました。その流儀は今後も同じですね。
安部:基本は変わりません。それに加えて最近はあえて仮説を置かなくても、データから何らかの相関を浮き上がらせてくれる技術が出てきているので、そういったものも使えるのではないかと期待しています。
ITやAIへの期待はありますけれど、飽くなき効率化の追求をしていくことが基本だと思っています。当社の場合、TCRという取り組みを30年前から延々とやっていて、絞ったぞうきんをさらに絞って効率化していく姿勢があります。
日高:TCRは何の略でしたか。
安部:始めはトータル・コスト・リダクションでした。途中からはトータル・クリエーティブ・レボリューションとなり、2013年からはグローバル・トランスフォーメション・フォー・コスト・リダクションとして取り組んでいます。
日高:CIOみたいですね。チーフ・インフォメーション・オフィサーですが、一時はキャリア・イズ・オーバーだなんて言われました。今また光があたってきて、チーフ・イノベーション・オフィサーと呼んだりします。
安部:単なるコスト削減ではない。情報を管理するだけではない、という文脈は似ているかもしれませんね。もっとも今ではTCRはTCRで通じます。何の略だったか、あまり気にしていません。30年もやっていますから。
日高:中身は変わるわけですよね、当然。
安部:はい。数年ごとにTCRのテーマが変わっていきます。草の根活動によるコストダウンにしても、トップダウンのイノベーションにしても、どちらもTCRの文化の上にあります。今後もTCRを続けていき、トップラインの伸びとコストの伸びが並行にならないようにするつもりです。
日高:30年間というと、いろいろな人が入れ替わります。経営トップも替わって、それでもずっと継続してきた。それも花王さんの文化なのでしょうね。創業以来の理念というか。
Powered by リゾーム?