15年を費やし、世界の業務を標準化
日高:売り上げ増大と利益率向上にITを使ってどう寄与していくかですが、長年、IT利用の先進企業としてやってこられた花王さんがさらに一段上に行こうとするのは大変なのかもしれません。中計の大きな目標を達成するためにコストを抑えていく、それにはやはり業務の徹底的な標準化とそのグローバル展開かと思いますが。

花王 執行役員情報システム部門統括 1980年青山学院大学理工学部卒業後、花王石鹸(現花王)入社。2003年情報システム部門情報技術グループ部長、2010年同戦略企画部長。2013年12月情報システム部門統括(現任)。2015年3月執行役員(現任)。
安部:できるだけ標準化して一つのシステムをみんなで使うのが一番効率がいいわけです。簡単ではないですけれども。業務の標準化には2000年から取り組んできました。東南アジアで独SAP社のパッケージソフトを導入したのが皮切りで、アジアから始めて、欧米で進め、日本の導入が最後になりました。グローバルに展開してきて、あるレベルの標準化はできたかな、というところです。
日高:どの程度、展開されたのですか。
安部:SAPを使った我々の情報システムを標準として入れたグループ企業が世界で95社あります。
日高:結構多いですね。日本人も外国人の方もみんな一緒になってやったわけですよね。
安部:いろいろな組み合わせがありますけれども、一緒になってやってきて、今の仕組みができました。これが効率化のベースになりますが、止まっているわけにはいかなくて、さらなるブラッシュアップが必要です。
一例をお話すると、2015年から2016年にかけて、グローバル・キャッシュマネジメントに取り組みました。世界中で売り上がるお金を1カ所にまとめ、支払いもまとめてやります。すでに資金繰りで改善効果が出ています。
日高:お金の見える化ができますよね。
安部:小さな子会社の場合、現地の口座にお金が残っている場合もありますから、100%見える化したわけではないのですが。この仕組みを今度さらにどう広めて、どう深めていくのか、考えています。
業務とシステムの標準化については、次の世代に仕組みをどう継承していくかという課題があります。世代交代もありますから。先行して取り組んだ地域から「もう1回、教育してほしい」と我々にお呼びがかかってきています。
日高:常にコミュニケーションをとり、教えつつ、グローバルな企業グループとして一つの方向に進んでいく。その努力を怠らないということですね。中計を発表した際、M&A(企業の合併・買収)にも言及されていました。買った事業も今の仕組みに乗せていく。これが基本方針でしょうか。
安部:はい。同じような仕組みが二つも三つもあっても仕方がありませんから。とはいえ、小規模な会社を買った場合なら一気に進めやすいですけれども、時間がかかる場合もあるでしょう。
標準化の取り組みを2000年から始め、95社に広げ、2015年に一段落したわけですが、15年かかりました。先ほど「IT利用の先進企業」と言って頂きましたが、そんなことはないのです。15年もかかったのは褒められた話ではありません。
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