中東政策のカギ握るクシュナー氏

棍棒外交は中東ではどうなるでしょう。トランプ氏はかねてからイランとの核合意を破棄すると発言しています。大統領に就任してからの1年間を振り返ると、トランプ氏はオバマ前大統領が達成した成果を突き崩すことにやっきになってきました。イランとの核合意は外交面ではこれの最たるものです。核合意を反故にして、サウジアラビアなど伝統的な同盟国との関係をさらに強めるのか。

川上:大きな流れはおっしゃる通りだと思います。しかし、中東の政治情勢がどのように進むのか、変数が多すぎて読むことができないのが実情です。米国とイランだけでなく、ロシア、サウジアラビア、過激派組織の「イスラム国(IS)」――。

 中東政策は矛盾だらけと言えるでしょう。トランプ政権の主眼は米国第一、自国の安全です。なので、中東にはあまり関わりたくない。シェールガスが開発され、エネルギーの自給でめどがついたのでなおさらです。しかし、ロシアがこの地域で勢力を拡張するのは面白くない。

ロシアの勢力伸長が目立ちますね。イランとの関係はもちろんのこと。12月11日にはウラジーミル・プーチン大統領がシリア、トルコ、エジプトを一挙に歴訪しました。10月にはサウジのサルマン国王が訪ロし、最新鋭地対空ミサイルシステム「S-400」を購入する仮契約にサインしました。原油価格の維持でも、両国は共闘できる立場にあります。

川上:そうですね。トランプ政権における中東政策でのキーパーソンは娘婿であるジャレッド・クシュナー上級顧問だと思います。彼はロシアゲートに関わっているので、中東情勢の今後の展開を読むのがさらに複雑になるわけです。

 私は、トランプ氏がエルサレムをイスラエルの首都と認めたのは、ロシアゲートに対する注目を海外にそらせることが目的だと見ています。もちろん、クシュナー氏をはじめとするユダヤロビーの力があったでしょう。

 ロシアゲートをめぐってクシュナー氏の退任が取り沙汰されるようになりました。そうなれば、トランプ政権において、軍人がますます力を持つようになります。

 皮肉な話ですが、この話は東アジア情勢には小康状態をもたらすかもしれません。仮に中東で紛争が起きて、米国が関与しなければならなくなった場合、北朝鮮と2正面で軍を展開するのは難しいでしょうから。

 ただし、軍人が力を持つ政権は、軍人だからこそ戦争を避ける面があると思います。危機を煽るものの、結局、軍事力は行使せずに終わるかもしれません。それで武器が売れれば、軍事産業を背景に持つ軍人たちにも、「商売人」であるトランプ氏にも悪い話ではないでしょう。

米国が目指すオフショア戦略と「商売外交」

米国家安全保障戦略は、日本や北大西洋条約機構(NATO)など同盟国との連携も柱の1つにうたっています。中ロとの宥和を進めるのならば、同盟重視をあえて掲げる必要はなかったのではないでしょうか。

川上:それは米国がオフショア戦略を進めるからだと思います。中国の正面は日本に、ロシアの正面はNATOに任せ、米国は真に危機が迫った時にだけ展開する。米国は防衛費を大きく減らすことが可能になります。

 さらに各正面の力を高めるために武器を売り込む。完全な「商売外交」です。11月の日米首脳会談でトランプ氏が米国製武器の購入を求めたのはその典型です。その意味では北朝鮮が脅威であり続けたほうが米国にとっては都合がよいとも言えます。

 先ほど、米国が北朝鮮を先制攻撃する可能性のお話しをしました。その理由の1つに「戦争経済」があると思います。建前上の理由は、核を拡散させない、NPT体制の保持などがあります。しかし、本音では、ロシアゲートから米国民の目をそらせる、北朝鮮が保有するミサイル発射機の数が限られている今のうちに叩く、そして、戦争経済があると考えます。巡航ミサイル「トマホーク」を何千発と打つことになりますから。

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