NATO型は、①日本に核兵器を備蓄しておく、②有事には米国がこれを日本に貸与する、③日本が自ら攻撃に使用する。注意を要するのは、核兵器を使用する決定権を米国が有していることです。米国の同意がなければ貸与されないわけですから。

 フランスはド・ゴール大統領が1960年に米国の反対を押し切って、独自に核武装しました。使用権も当然、フランスが持っています。日本の場合、この形はとりづらいのではないでしょうか。国内に核アレルギーがあるので自力で開発するのが難しい。開発に関して米国の了解を得る必要もあるでしょう。

 仮に日本が核武装を選択したなら、次のように段階的に進めることになると思います。①米国による核の持ち込みを認める →②NATO型の核シェアリング →③英国型核シェアリング。こうした手順を踏むならば、日本の核武装と日米同盟は両立させることができ、かつ、デカップリングを防ぐこともできるわけです。

 国際政治学者のケネス・ウォルツ氏は、核の拡散は戦略的な安定を招くと論じています。

 核シェアリングをする場合、日本はNPT(核兵器不拡散条約)*から脱退する必要があるのでしょうか。もし、そうなら、国際的に批判の的になりそうですね。

*:核兵器を拡散させないための条約。核保有国が非保有国に核兵器を渡すこと、非保有国が核兵器を製造すること、などを禁止している

川上:その必要は全くありません。日米同盟の下で米国とともに行う行為であり、何度も言うようにNATO諸国とは現実に行っていることで、国際的に認められる行為です。

混迷するロシア政策

米国は今後、ロシアに対してはどのような政策を取りうるでしょうか。

川上:ロシアに対しても「ディール」だと思います。ただしロシアゲート疑惑の影響で今はディールできない状況にあります。

 ティラーソン国務長官の去就が注目されています。彼が退任するとロシアとのパイプが切れてしまうので、それが懸念材料ですね。後任としてCIA(米中央情報局)長官のマイク・ポンペオ氏を充てる構想が報道されています。そうなれば、ロシアとの話し合いのルートが本当になくなってしまい、米ロ間の紛争の可能性が高まることになります。

 米国が北朝鮮を先制攻撃する際には、ロシアとも事前に合意する必要があります。ロシアも北朝鮮に影響力を持っていますから。もし、そうなれば、ロシアは中東における米国の譲歩を求めるでしょう。

 石油において譲歩を求める可能性もありますね。

原油価格を保つため、ロシアとOPEC(石油輸出国機構)諸国が生産協定を維持しています。しかし、原油価格がある程度以上を維持すれば、米国のシェール勢が増産に走り、再び価格が下落する恐れがある。ロシアはこれを回避したいわけですね。

川上:そうです。シェールの増産は認めても、輸出は控えさせるなどが考えられます。これについてもカギを握るのは、米石油大手エクソンモービルで会長を務めた経験を持つティラーソン氏です。

同氏の去就は、ホワイトハウス内でのパワーバランス、対北朝鮮政策、対ロシア政策と様々な面に影響を及ぼす。目が離せませんね。

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