市場は伸びるとしても格安スマホ会社同士の競争も激しくなります。他社との違いをどう出していく考えでしょうか。

鈴木:来年3月までにシステム設備を大手通信会社とつなぎ、『フルMVNO』と呼ばれる事業者になる予定です。これは日本で初めてです。従来のMVNOはインフラ全体を大手通信会社から借りていました。フルMVNOは、大手に代行してもらっていた『加入者管理機能』を自社で運営し、利用者の電話番号や位置情報を自前で管理できるようになります。無線ネットワークを運営する上で、独自のサービスをより自由に開発できるのです。

具体的に利用者にはどんなメリットがあるのでしょう。

(写真=陶山 勉)
(写真=陶山 勉)

鈴木:例えば、海外に出かけてスマホを利用する際の通信料を、従来のMVNOが独自に設定するのは難しかった。インフラを持つ大手と海外の通信会社の間で決めているからです。フルMVNOなら海外の会社と直接契約できるので、定額制や通信速度が遅いけれど割安にする、といった多様な料金プランを作りやすくなります。通信サービスを受けるために必要なSIMカードと呼ばれるものを自社で発行し、カード内に書き込んでいた電話番号や契約情報を我々が管理できるようになるためです。

大手が提供するサービスに近づくわけですね。

鈴木:そのために50億円近いシステム投資をしました。薄利多売のMVNOとしては負担となりますが、当社には9000社以上の顧客基盤を持つ法人向けビジネスという強みがあるので、それが可能となりました。

 フルMVNOに進出し、法人向けでは、つながる車を実現する『コネクテッドカー』や工場などの『IoT(モノのインターネット)』の領域で、新たな通信需要を見込めます。端末数が膨大になるこうした分野では、ネットワーク管理機能が特に重要になります。例えば、工場の規模によっては100万回線をつないで運用管理しなければならないケースもあります。あらかじめ自分たちの管理するSIMカードを組み込んでおくことで、運営しやすくなります。

アマゾンのサービスにも対応

事業のもう一つの柱である法人向けのクラウドサービスの領域で、米アマゾン・ドット・コムが提供するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の存在感が日本でも高まっています。どう対抗しますか。

鈴木:確かにアマゾンはクラウドサービスでは一番の競合相手ですね。日本の顧客、特に大手企業は自社向けの仕様を求める傾向が強いので、そこに対応できる技術を持った我々がリードしていると思います。

 でも、そこまで複雑な仕様が必要ない企業や業務もあります。そういう用途でAWSの利用企業が増えているという現実に対応する必要が出てきました。社内では『自社しか使えないサービスはやめよう。他社のサービスにも優れたところはあるのだから、一緒に組む方法だってあるじゃないか』と言っています。

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