日本のインターネット産業を切り開いて四半世紀、技術力で大手通信会社と勝負してきた。格安スマホにも参入し、業界首位と存在感は健在だ。既存勢力への挑戦はやめない。IT(情報技術)産業をリードする米国勢にも闘志を燃やす。
(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)
(日経ビジネス2017年9月25日号 88~91ページより転載)

格安スマホはもっと伸びる。シェア30%は可能。
仮想通貨も登場、いよいよ旧来の仕組み変わる。
企業向けのデータ通信サービスが主力事業ですが、このところ大きく伸びているのが格安スマートフォン(スマホ)などのモバイル通信事業ですね。

鈴木幸一氏(以下、鈴木):『IIJmio』という我々のブランドが個人向けの格安スマホ市場で1位になりました。ほかにビックカメラなど様々な企業の裏方となって、相手先ブランドでもサービスを提供しています。こちらも伸びています。個人向けのほかに法人向けサービスもやっていまして、両方合わせた回線契約数はこの1年で4割近く増えました。足元では約200万回線になっています。
格安スマホはもっと伸びる市場だと思っています。当社のような企業は大手通信会社からインフラを借りて通信サービスを提供しているので、業界内ではMVNO(仮想移動体通信事業者)と呼ばれています。欧州を見るとMVNOの市場シェアはおおむね二十数%で、ドイツでは45%を超えたとの統計もある。それに対して、日本のMVNOは携帯電話市場全体の7~8%程度のシェアです。諸外国と比べればまだまだ伸びる余地がある。将来的に30%程度までは普及するのではないでしょうか。
大手は格安スマホに顧客を奪われ、巻き返そうと必死です。
鈴木:サービス競争は望むところですが、その前提として、より公平な競争環境が整備されていくことが重要です。私がよく大手に対して言ってきたのは『共通の通信インフラをどの会社も同じ利用料で使える公平な基盤の上で競争しましょう』ということです。
公平な競争環境ではない
鈴木:例えば、NTTドコモは自前の通信インフラを使って、通信サービスからインターネット接続、コンテンツ配信まで一体的に手掛けていますよね。もしドコモが我々にインフラを貸し出す際の料金と、ドコモが使用するインフラの原価が同じであれば、それでも公平な競争環境と言えるでしょう。現状は、その点、十分とは言えません。
電話の時代には通信インフラを持つ企業だけが通信サービスを独占していました。それがインターネットの時代になると通信インフラを大手から借り受けたサービス事業者が、新しい技術や独自のサービスを投入して市場を作り上げてきました。モバイル通信も本来は通信インフラとサービスを切り分けた上で、大手とその他の企業がサービスで競争すべきだと思います。
NTTグループは光回線事業については「黒子になる」と宣言して直接販売から卸売りにシフトしました。本当はそこまで割り切っていないということですか。
鈴木:光回線だけを見れば割り切ったのでしょうが、一つのグループとしてはインターネット接続事業をNTTコミュニケーションズが手掛けています。必ずしも黒子に徹しているわけじゃないのに『うまく言うよなあ』とは思います。やはり通信インフラとサービスとでは勝負の土俵が別なのだということを、もう一度お互いに認識した上で競争したほうがいいと思いますね。
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