部署名から「グローバル」外す

始める決断より、やめる決断の方が難しいですよね。

畑中:新しいことをどんどん始めていくと不要な業務もたまります。1つ新しいプロジェクトを始めるなら、既存のものを3つはやめるべきです。こちらは変化が激しい時代に投資を決断するのだから、担当者にもそれぐらいの本気を見せてほしいと思っています。

 経営会議では提案内容を説明する必要はありません。出席する経営幹部は事前に資料を読み込んできます。その代わり担当者には3分間で提案についての思い、覚悟を語ってもらいます。そしてその場でゴーかノーかを決めます。持ち越しはありません。せっかく良いアイデアでも完成度にこだわり過ぎると手遅れになりますから。

変化が激しい時代にぶれない経営を貫くための要諦は何ですか。

畑中:常に自分自身に問いかけ続けるんです。例えば、『ジェネリック薬は本当にやらない方がいいのか』『もっと新興国に投資した方がいいのでは』など自分の判断に疑問は出てきます。それを毎年経営企画部に検証させています。

 うちは変わることでしか安定を得られない会社だと、みんな認識しています。過去の成功は明日の成功を約束してくれません。一例を挙げると合併した時に『グローバル・カテゴリー・リーダー』というスローガンを作りました。自分たちが選んだ領域でナンバーワンになるという戦略を表した言葉です。

 ただ、ある時期から寄りかかり過ぎてしまった。言葉通りの挑戦なら失敗も許されるという免罪符になっていたんですよ。それで去年発表したビジョンには盛り込みませんでした。

 同時に『ドロップ・ザ・G』を合言葉に、社内の様々な部署名の頭についていた『グローバル』という単語も外させました。海外売上高比率は65%、従業員の6割、株主の49%が外国人です。わざわざ名乗る必要もありません。

次もしくはその次のCEOが外国人という可能性もあるのでは。

畑中:否定するものではありません。

傍白
 「製薬業が将来、様々な価値を出していくだろうと思っていましたが、これほど世界の人々に大きな影響を与えるようになるとは、想定していませんでした」。文系出身の畑中社長になぜ製薬会社に就職したのかを尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。ただ、今も文系の学生は製薬会社に高い関心を持たないようで、もどかしい様子です。
 「新しいことを1つ始めるのならやめるものが3つないとダメだ」は、素晴らしい経営観です。新しく始めるのはそれほど難しいことではありません。トップも「やってみろ」と言えばいいのです。しかし、売り上げが立っているものをやめる決断はなかなかできるものではありません。これこそが会社を強くする大原則だと強く感じました。

(日経ビジネス2016年9月19日号より転載)