例えば、移植関連と泌尿器疾患では既に世界のリーディングカンパニーだと考えています。残念ながらがんの分野ではまだまだです。ただ、現在成長を引っ張る製品群とパイプライン(開発候補品)を見ると、世界中の医薬品メーカーががん領域に乗り出す中でもかなりの競争力を蓄えつつあると自負しています。確固たる地位を築くにはさらに良い抗がん剤を出すことが大切になります。

画期的な新薬の開発には優れた研究者の存在が欠かせません。そうした人材は報酬も含めてマネジメントが難しいでしょうね。

畑中:2つのアプローチを取っています。一つは社外のネットワーク活用です。過去3年で20以上の提携を結びました。出資や買収で取り込んでも研究者が去ったら意味がないと考えており、フレキシブルな提携が増えました。

 次に今年4月に研究者の人事制度を見直しました。『プリンシパルインベスティゲーター』と『リサーチプロフェッショナル』という上級職を用意しました。前者は社内ベンチャー的に自由な予算、計画のもとで動きます。後者は社内外から一目置かれる一流の研究者を処遇する仕組みです。

 管理職を目指すという道も残っていますが、この2つを加えることで組織にスピード感と創造性を持ち込めました。

それぞれ何人いるんですか。

畑中:プリンシパルインベスティゲーターは5人前後、リサーチプロフェッショナルは15~25人という規模を考えています。これらのポジションを狙う層はアソシエート(次世代幹部)としてプールしています。社外でネットワークを築きつつ、社内で新しい仕組みを整えて、イノベーションにつなげていきます。

 みんなが頑張って組織も成長する、という時代が終わって久しいです。個人のキャリア観は多様になり、一律の制度を当てはめるのは難しい。そういう時代の変化が、研究という先端の職種で顕著に表れたということです。

経営人材はどのように育てているのですか。

<b>各国のMR(医薬情報担当者)、マーケティング担当者らが集う会議。日本人は少数派だ</b>(写真=上:的野 弘路)
各国のMR(医薬情報担当者)、マーケティング担当者らが集う会議。日本人は少数派だ(写真=上:的野 弘路)

畑中:5年前から様々な部門や地域から毎年部長級20人前後を選抜し、海外の大学と組んで開発した独自の研修を受けてもらっています。日本人参加者は3割ほどです。研修自体は1年で、その後フォローでもう1年ありますが、最後に全員が自部門の課題やその解決策を発表します。

 私も含めて経営陣が発表を聞き、議論に加わります。内容によってはすぐに実行に移します。研修でありながらマネジメントの演習でもあります。

修了すると経営幹部候補ですか。

畑中:エグゼクティブ・コミッティと呼ばれる経営幹部12人のうち8割以上が修了生です。ちょうど40代後半から50代前半の世代に当たります。若いと思われるかもしれませんが、海外の競合と比べると目立つほどではありません。ただ、能力的には引けを取らない人間がメンバーに集まっていると自負しています。

CEO(最高経営責任者)の仕事は何だと考えていますか。

畑中:次の世代に何を残すかを毎日考えることです。後継者の育成も大事でしょうが、事業やパイプラインなど新しく何かを始めるなら代わりに何をやめるべきかというトレードオフを日々考えていますね。経営会議で新しい提案が上がるたびに必ず『それでは代わりに何をやめる?』と尋ねます。

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