確かに高額医薬品の保険適用が広がると、社会保障のあり方まで考えなければならないでしょうね。

畑中:高額医薬品については日本以外でも議論になっていますが、考え方は国によって様々です。個人的には一定の負担でユニバーサルな社会保障を受けられる日本の仕組みは理想に近いと思っています。国民皆保険のおかげで日本は世界有数の長寿国になりました。高齢化が進む国にとって、日本の姿には示唆が多く含まれているはずです。ただ、日本の社会保障制度が経済成長を前提に設計されているとすれば、今の形で存続するのは難しいでしょう。

最先端で勝負する

先進国の高齢化で製薬会社の経営はどのように変化していくのですか。

畑中:変化は既に起きています。例えば、新薬開発の際に、仮に成功したら保険診療の範囲に入れそうなのか、各国でいくらで発売できるのかなどのデータは必ず踏まえるようになっています。

 現状、既にかなりの疾患でジェネリック薬(後発薬)がそろっています。私どもは遺伝子や再生医療といった最新技術を組み合わせながらより難しい疾患に挑戦していく方向にあります。医療現場からの要望は高いものの、治療技術が確立されていない疾患を選んでいます。

 かつては同じ領域の中で3番手でも、ビジネスが成立していた時代がありましたが、今は違います。1番手でない場合は、既存品の有効性や安全性を凌駕するものを狙っています。

山之内製薬と藤沢薬品の合併は経営効率を上げる必要があっての戦略なのか、厳しい競争を勝ち抜くための戦略なのか、どちらでしょう。

畑中:答えは両方です。アステラス製薬の設立時に『先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する』という経営理念を掲げました。先端という部分にこだわりがありますからジェネリックや大衆薬はやりません。新薬の研究開発に経営資源を集中してきました。

 それに合併しても規模としては中堅ですので、網羅的にやってもウイニングストーリーを描けませんでした。蓄積した技術や経験を生かせる領域が泌尿器疾患と移植関連だったのです。合併翌年に抗がん剤領域も候補に上がり、参入を決めました。

研究開発が長期にわたる一方で、3カ年の中期経営計画で目標を立てるのは矛盾していませんか。

畑中:社内では研究開発費を除く前の営業利益を指標の一つにしています。これが大きくなれば健全な範囲でリスクを取れますし、株主にも還元し続けるサイクルも生まれます。ROE(自己資本利益率)という目標を意識するときには、分子である利益の拡大を考えています。

 研究開発投資とそこから利益を得られるまでにはタイムラグはありますが、やはり最後は利益になって出てきます。海外IR(投資家向け広報)に熱心というわけでもありませんが、このあたりが評価されて当社は国内の同業他社より15ポイントほど外国人の株主構成比率が高いようです。

規模だけが競争力ではない

海外の大手と比べると日本企業の地位は高くありません。どのように生き残っていく考えですか。

畑中:得意な領域で継続的に新薬を出す。これに尽きます。企業規模だけが競争を制する要素ではないと見ています。我々は世界で18~20位ぐらいにとどまりますが、この順位を上げないと将来がないわけではありません。