武田薬品工業と時価総額で業界首位の座を争うアステラス製薬。海外大手とは一線を画する独自路線で2016年3月期は最高益を更新した。畑中社長は自らの仕事を「次の世代に何を残すかを毎日考えること」と話す。

(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)
PROFILE
[はたなか・よしひこ]1957年静岡県生まれ、59歳。80年一橋大学経済学部を卒業後、藤沢薬品工業入社。2003年同社経営企画部部長。2005年4月、アステラス製薬(山之内製薬と藤沢薬品が合併)の経営戦略本部経営企画部長。米国法人でCEO(最高経営責任者)を経て、2009年に経営戦略・財務担当の上席執行役員。2010年の米OSIファーマシューティカルズ買収を指揮。2011年6月から現職。今年5月から日本製薬工業協会会長も務める。

変わることでしか会社の安定は得られない。
会議では提案者の思いと覚悟を見ている。

高額医薬品の「オプジーボ」が話題になっています。社会保障の範囲でどこまで負担すべきと考えていますか。

畑中好彦氏(以下、畑中):革新的な医薬品の価格には、患者や社会にもたらす価値が十分に反映されなければなりません。その価値は科学的なデータによる裏付けが必要です。これがまず前提になりますが、とにかく良い薬を作ればいいというわけではありません。医薬品メーカーは各国の医療システムの中で存在していますから、その持続性に注意を払う必要もあります。

 長期にわたって研究開発をしなければならない製薬企業の立場からすれば、革新的な医薬品を開発できた際には正当に評価していただきたいと考えています。また、一定の期間は知的財産を保護してもらいたいという要望もあります。ここが担保されないと、長期にわたって研究開発投資を続けるリスクは取りづらい。

 今は高額医薬品の価格にだけ焦点が当たっていますが、もっと幅広い意味で負担と給付のバランスや、医療費を含めた社会保障に関する世代間の公平性といった一段高いところから議論していかなければならないと思います。

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