歯舞・色丹の「割譲」はフルシチョフの責任

今回の安倍首相の発言を、ロシア国内はどう評価しているのですか。

名越:まだ、あまり論評は出ていません。とはいえ、ロシア国営放送が合意直後、4島の大きさや過去の経緯を含め、かなりの時間を割いて伝えました。プーチン大統領が歯舞・色丹2島の割譲も想定して、環境整備を始めたとの印象を受けました。

ロシアにとっては「割譲」になるわけですね。

名越:そうです。先ほどのヤルタ会談などを根拠に、歯舞と色丹は第二次世界大戦時に正当に獲得した、と主張しています。

 これを割譲するのは、「フルシチョフが日本と56年宣言を結んだから」。プーチン大統領の責任ではないと主張する構えです。ロシア国内では北方領土の割譲に9割の人が反対しており、引き渡しには世論を説得する必要が生じます。プーチン大統領は4年前のクリミア併合でも、1954年にフルシチョフがクリミアをロシアからウクライナ共和国に移管したことを「憲法違反」と非難しました。フルシチョフの誤った方針の尻拭いをさせられていると演出するかもしれません。

ヤルタ会談を根拠にするのはまだ理解できます。しかし、当時は日本領だった千島列島にソ連が攻撃を開始したのは8月18日でした。ソ連は9月2日に日本が降伏文書に署名するまで戦争は継続していたととらえているので、このタイミングについても正当と考えているわけですね。

名越:ええ。しかし、歯舞を占拠したのは9月3日から5日にかけてでした。これは署名後のことなので、明らかに不法です。

ロシアはこの点をどう説明しているのですか。

名越:口をつぐんで何も言っていません。