ダントツが続けばそれでいい

 私はね、飛び抜けてたんですよ。トステム社内でも、業界内でも。これは自慢じゃないけど、生まれつきだと思いますよ。経営者というのは、突然変異でそういう才能を持った人が出てくる。(普通の人は)京セラの稲盛和夫さんや日本電産の永守重信さんの真似をしろと言われても、できるもんじゃないよ。

 親子2代続けて突然変異があるか、その確率は低いかもしれないね。でも(住生活は)しっかりとした基礎ができているから、標準以上なら大丈夫だろう。住設業界内で、ダントツの業績を続けられればそれでいいんだと思うよ。

 2月19日、住生活は新社長にINAXの杉野正博社長を充てる人事を決めた。午前中に開かれた臨時取締役会には、約3カ月ぶりに健次郎氏が姿を見せた。

 社長人事は全員一致で承認。健次郎氏は閉会の際に、「新体制でしっかりやってほしい」と挨拶した。無事に手続きを終えたという安心感からか、体調の悪化を感じさせない晴れやかな表情だったという。潮田親子による世襲が“完成”した瞬間だった。

 上場企業での世襲には批判の声も上がる。ある証券アナリストは、あきれ顔で言う。「経営者として優れているかどうか以前に、洋一郎氏の手腕は誰にとっても未知数。そんな人物を後継者に選んだ時点で、この会社のガバナンスが町工場レベルだと底が割れた」。

 業績が好調なうちは、こうした批判も健次郎氏の独特な持ち株会社観を揺るがすものとはなりにくい。6月の株主総会で健次郎氏は退く。後を継ぐ洋一郎氏が業績で力を示さない限り、1代で巨大企業グループを築き上げた父の特異な企業統治は説得力を失ってしまう。

住生活流、大再編時代の隠れた主役

 大株主となった投資ファンドによるTOB(株式公開買い付け)、外国企業が株式交換で日本企業を買収できるようになる法改正、初の日本企業による敵対的なTOB…。昨年来、日本企業の大再編時代を実感させる動きが相次いでいる。

 大きく報じられる派手なドラマの陰で、住生活グループのような経営統合も静かに進んでいる。純粋持ち株会社傘下の事業子会社は、いずれ合併させる事例が多いが、あえて事業会社の経営統合に踏み切らない方式だ。

 最近話題になった経営統合は、家電量販店のデオデオなどが参加しているエディオンにビックカメラが参加を決めたことだ。大丸と松坂屋ホールディングスの場合も、同様の経営統合になると見られる。

 住生活流の統合には合併に伴う痛みを緩和したうえで、その果実を享受できる面がある。

 1つは、経営統合により企業の株式時価総額を一気に拡大できること。時価総額を大幅に増やすことで買収されるリスクを抑える効能がある。もう1つは購買力を一挙に拡大させて仕入れなどで好条件を得られること。こうしたメリットは合併などと変わらない。

 もう1つのメリットは合併などにはないもの。通常の経営統合に伴う“痛み”を避けられることだ。事業会社を持ち株会社の下にぶら下げるので、傘下企業で人事労務体系を一本化したり、社員間の軋轢を生みがちな社風の違いなどを気にする必要がない。

 さらに創業家にとっては、傘下企業の経営を直接担うわけではないため、経営責任を問われにくく、地位を保ちやすいメリットもある。

 だが、住生活流の統合は、会社は誰のものかという問いを改めて突きつける。オーナー一族以外の株主にとっては、この方式にメリットがあるとは限らない。今回の社長交代が示す通り、取締役会の監視機能にも限界がある。

 では社員にとってはどうか。同族支配の持ち株会社に支配されているとなれば、モラールの低下につながる可能性は否定できない。事業会社の運営には直接、手を出さないのが住生活の特徴とはいえ、社員にとって不利な経営判断が下される可能性もある。創業家などと、ほかのステークホルダー(利害関係者)との利害調整をどう図るか。住生活流の経営統合はそんな難しさを抱えている。

(安倍 俊廣)