政府の後押しもあって「副業解禁」の波が押し寄せています。副業は、これまでとこれからの働き方双方を見つめ直すきっかけを与えてくれるでしょう。「複業研究家」として活動する西村創一朗氏に、個人が副業を選択するうえでの心構えなどを聞きました。働きすぎにつながる、情報漏れの恐れがある……。解禁に慎重な企業の姿勢について西村氏は「完全な思い込みだ」とも強調しました。(聞き手は奥平力)
■お知らせ

西村氏も登壇する「新しい働き方」対話イベントを開催します

日経ビジネスRaise Live 「新しい働き方を考える」 参加者募集
テーマ:「新しい働き方」
第一部:パネルディスカッション『働き方改革の理想と現実』
登壇者
(予定、50音順)
- 竹花元・法律事務所アルシエン パートナー
- 田澤由利・テレワークマネジメント代表
- 西村創一朗・複業研究家、HARES代表
- 堀達也・経済産業省経済産業政策局産業人材政策室 室長補佐
- 三村真宗・コンカー社長
第二部:ワークショップ「副業成功のポイントと課題は?、テレワークでオフィスは不要?……、プロに聞く『新時代の働き方』」
※5グループ程度に分かれてワークショップ。アジェンダは当日発表予定
第三部:参加者による交流会
日時:11月30日(金) 18:30~20:30
場所:東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 8F
公募人数:40人程度
参加費:無料
>>参加申し込みページへ
<span class="fontBold">西村 創一朗氏(にしむら・そういちろう)</span><br /> 複業研究家/人事コンサルタント。1988年神奈川県生まれ。大学卒業後、2011年に新卒でリクルートキャリアに入社し、法人営業・新規事業開発・人事採用を歴任。本業の傍ら15年に株式会社HARESを創業し、17年1月に独立。独立後は複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業向けにコンサルティングを行う。<br /> (写真=村田 和聡)
西村 創一朗氏(にしむら・そういちろう)
複業研究家/人事コンサルタント。1988年神奈川県生まれ。大学卒業後、2011年に新卒でリクルートキャリアに入社し、法人営業・新規事業開発・人事採用を歴任。本業の傍ら15年に株式会社HARESを創業し、17年1月に独立。独立後は複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業向けにコンサルティングを行う。
(写真=村田 和聡)

西村さん自身が副業を始めたきっかけを教えてください。

西村 創一朗氏(以下、西村氏):「日本の働き方を変えるような事業をゼロから立ち上げたい」という思いから2011年4月にリクルートキャリアに入社しました。営業職配属でしたが、頑張れば新規事業担当の部署にいつかは異動できるだろうと。ただ働くうちに気づいたのは、成果をあげた先の姿。営業リーダー、営業マネージャー、営業部長、営業担当の役員というタテ型のキャリアしかないということでした。そこで転職を試み、スタートアップ企業から内定も得ました。しかし当時すでに2人の子どもがいて35年の住宅ローンを組んだばかりで、いわゆる「嫁ブロック」にも遭って断念しました。「なんとか転職せずに済む方法はないか」と考えた末、至った結論が副業だったのです。

どのような副業ですか。

西村氏:もともとリクルートキャリアの社内向けに、インターネット業界のニュースを5~10本まとめた「日刊創一朗」というメールマガジンを発行していました。その経験をいかして、ネット関連の新サービスを紹介するブログを立ち上げました。月10万以上のページビューを得るようになると、社内の担当役員の目にとまって新規事業の部署への配属が決まりました。ブログ立ち上げが13年5月、配属が翌年4月ですから、1年足らずで自分がやりたかった仕事にチャレンジする機会をつかめたと思います。

選択肢は、「押し殺す」と「飛び降りる」だけか

本業のキャリアアップという目的を達成した。その後も副業を続けたのはなぜですか。

西村氏:「純粋に楽しかった」というのがあります。情報を集めて自分なりに編集をし、多くの人に届けて行動変容を促す。そういうことが好きだから続いた面が大きいですね。趣味のようなものですね。ビジネスパーソンの「さだめ」として、やらなければいけない仕事を優先しなければならない。本業がどれだけやりがいがあるものだったとしても、ガス抜きの場として副業をもっていることは大切だと思います。副業で培った人脈は社内で新規事業を起こす上で非常に役立ちました。

 私は副業を通じて、今までになかったキャリアが作れました。ただこうしたケースは当時、世の中ではまれ。「やりたいことを諦めて自分を押し殺す人生」か、「清水の舞台から飛び降りるようなリスクを冒してでもやりたいことをやる人生」か。この2つの選択肢しかないのは、すごく理不尽です。新しいものに挑戦したいが、リスクは最小限に抑えたい。これは誰でも思うことです。「会社を辞めずに挑戦できる機会を探す」。副業という第3の選択肢を世の中に示したいと考えています。

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