キャッシュレス決済やバーチャル店員など、コンビニエンスストア業界でも特に次世代店舗へチャレンジ精神をみせるローソン。10月には、家電・IT(情報技術)の国際見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2018」に初出店した。同社で未来の技術を研究するオープン・イノベーションセンターの牧野国嗣氏に話を聞いた。
(聞き手は浅松和海、白井咲貴)
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シーテックでは「2025年のコンビニ」をテーマにブースを出展していました。将来どのような市場環境を想定しているのでしょうか。
牧野国嗣・オープン・イノベーションセンター長(以下、牧野氏):ローソンがコンビニビジネスを始めてから40年以上がたちました。国内店舗数は現在1万4000店以上にまで増え、拡大の歴史をたどってきました。ただ、ここにきてそのフェーズが変わってきています。
都市部であれば同じエリアに何店舗もコンビニがある。さらにスマートフォンの普及で、お店に行かなくてもインターネットで何でも買える環境になっています。25年に技術がどこまで進歩しているか分かりませんが、「あの商品が欲しいな」と考えるだけで、脳波を検知して注文できるような世界になっているかもしれませんよね。そのような世の中になったとき、リアルのお店の意義が問われると思います。
人手不足もさらに深刻になっているでしょう。コンビニ業界に限らず、今でもアルバイトを採用するのが難しくなっています。コンビニは24時間365日開いているので、従来のような人手に依存した形だと、そもそもお店が維持できなくなる未来がやってきます。
環境の変化にどう対応していきますか。
牧野氏:お店に来てもらうためには、接客を高度化し、生活拠点としての機能を持たせる必要があります。そうすることで、極端にいえば物販だけではなくサービスでも収益を上げられるようなビジネスモデルにしていきます。今でも公共料金の収納代行や宅配便など様々なサービスを用意していますが、これらは来店客の「ついで買い」を狙ったもので、大きな利益が出るものではありません。収益全体のサービス比率はまだまだ小さい。
接客の高度化とは?
牧野氏:例えばシーテックでデモ展示した「バーチャル店員」がその一つです。あれはAI(人工知能)で動くアニメーションのキャラクターが接客をすることを想定しています。背景としては、本当に良い接客、優れた接客を学習させれば、それを全国の店舗に展開できるのではないかという狙いがあります。
生活拠点という意味では、遠隔医療もその一つです。リモート会議システムを使って、近くのローソンにいながら遠くにいる医師の診察を受けられるようにするものです。遠隔医療は国の規制もあるので構想段階ですが、同じ技術は医療以外にも生活を助けるサービスに応用できるはずです。
人手不足はどう解決しますか。
牧野氏:デジタルの活用がカギになってきます。いまスマートフォンのアプリで商品のバーコードを読み取ることで自動決済ができる仕組みを試験的に約10店舗で導入しています。これでお昼時などのレジの混雑解消が期待できます。お客さまにとっても便利ですが、店舗側の負担も大きく減る。業務の中でレジ作業というのは一番大きいからです。今年度中に導入店舗を100店舗まで増やし、徐々に全国に広げていきます。
シーテックで展示したウォークスルー決済も狙いは同じです。こちらはRFIDという電子タグを使ったものです。商品を入れた袋を持ってゲートを通過すれば電子タグを読み込んで自動決済してくれます。決済をできるだけ省力化して、将来的には店員が1人の体制でも店舗が回るようにしたい。
ただ課題もあります。いまこの電子タグは10円ほどします。この費用を誰が負担するにしても、1円くらいまでコストダウンできなければ実用化は現実的ではありません。そしてタグを商品に貼り付ける作業も今は裏で手作業で行なっています。試験段階なのでできることですがこれを全国の店舗ではできません。
未来のコンビニを考えるうえで、これから社会人になる学生に何を期待されますか。
牧野氏:世の中の変化はとても激しい。25年に実際どうなっているか、想像しているものと全然違うかもしれません。ただ、世の中を変えていくのは若い人たちの発想です。ローソンも大きく変わるフェーズ。いまの良い仕組みは残せばいいし、そうではないところは全く別のものに作り直せばいい。若い人たちにとって、コンビニは生まれた時からありますが、「ここ違うんじゃないの」というところがあると思います。どう変えていったらいいのか、柔らかい頭で考えてもらいたいですね。

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