今後も「IS」を名乗り続けるでしょうか。
保坂:この先は、人数が集まるかどうかにかかっていると思います。「IS」のブランド力が高く、人を集める力を認めることができれば、この看板をかけ続けるでしょう。しかし、そうでなければ、元の国内組織に戻るかもしれません。“その他大勢”いるテロ組織の一つになる。
一方、シリアとイラクを後にした外国人は母国に帰ってテロを起こすことが懸念されます。1990年代に「アフガン帰り」がテロの主流になったように、「シリア帰り」「イラク帰り」と呼ばれる人が増える。
「シリア帰り」「イラク帰り」が多くなるのはどこの国でしょう。
保坂:欧州ではフランス、ロシア、英国。中東ではチュニジア、サウジアラビア、ヨルダン、トルコが挙げられます。いずれも数千人の人がシリアとイラクに渡った。
各国政府は「シリア帰り」「イラク帰り」の捕捉に力を入れるでしょうが、漏れは生じるでしょう。
彼らを捉える法的な根拠はあるのですか。それぞれの国で罪を犯したわけではないですよね。
保坂:多くの国が反テロ法の整備を続々と進めています。例えばサウジアラビアは、シリアで組織に所属し戦闘に参加することを犯罪とする法律を制定しています。
あと重要になるのはインターネットの規制ですね。ISはネット上で宣伝することで多くの人を集めました。したがって今後、「シリア帰り」「イラク帰り」を刺激する言説をどうやって規制するかが重要になってきます。
実は先日、私のtwitterのアカウントが凍結され、つぶやけなくなってしまいました。
え、保坂さんがテロリスト扱い? 網の目がそれほど細かいなら、インターネットへの規制も有効かもしれないですね。
保坂:私は、警告を発するためにつぶやいていただけなのですけどね。
ただ、テロをそそのかすツイートと警告を与えるツイートは同じデータを使っていることがあるので表面上似てしまいます。AI(人工知能)を使いうにしろ人海戦術でやるにしろ、区別するのは難しいでしょう。研究者にとっては悩ましい問題です。
最後にイランについてお伺いします。トランプ米政権が、核合意の破棄を臭わすなど、イランに対する強硬姿勢を強めています。ISが事実上崩壊したことで、米国にとってはイランと協力する理由が一つ減ることになります。米・イラン関係の今後はどのようになるでしょう。
保坂:トランプ政権ではいまだに中東外交の責任者がはっきりしません。したがって、ホワイトハウスと国務省や国防総省などの間で政策上のブレが見られます。とはいえ、トランプ政権が反イラン的態度をとっている限り、サウジアラビアなど湾岸諸国としてはハッピーではないかと思います。
ただし、イランとの核合意(JCPOA)はアラブ諸国も認めていますので、仮に核合意が破棄されて、イランが再び核開発を進めることになれば、それは対岸のアラブ諸国にとってプラスにはならないと思います。
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