(写真:永川智子)

今年6月には英国が国民投票で、EU離脱を決めました。英国に本社を持つ日立の鉄道事業への影響はありますか。

ドーマー:私を含め、英国民の半数近くは予想していなかった結果だと思います。本当にショックです。

 あの時のことを今もよく覚えています。6月23日の国民投票の前、私は日本で記者やアナリスト向けの説明会に出席していました。その最後に出たのが、「英国のEU離脱はあるか」という質問でした。私は自信を持って「絶対にない」と答えましたよ。

Brexitに落胆、そのまま自宅に直帰

 その後、飛行機に乗って東京からドイツのフランクフルトに戻りました。空港には24日の明け方に着いたのですが、そこでスマートフォンを見たら、「ブレーキング(緊急)ニュース」が流れてきました。英国がEU離脱を決めたと、大騒ぎになっていることを知りました。

 ロンドン行きの飛行機を待つまでの間、本当に信じられませんでした。あまりにもショックだったので、その日は会社には向かわず、家に直帰しました。

短期的にビジネスへの影響はありますか?

ドーマー:ただし、現状何か変化があるかというと、まだ何も起きていないというのが実情です。「business as usual」、事業は離脱前と変わっていません。ご存知のように、英国とEUの間で正式な離脱交渉はまだ始まっていません。

 我々が影響を分析するのは、交渉の具体的な論点が見えてきてからです。今はまだ、「こういう展開になったら、こういう行動をとる」といった具体的な議論をするには、時期尚早です。

 もっとも、我々が国民投票の前から主張してきた趣旨が大きく変わることはありません。日立は、英国だけでなく、欧州全体でビジネスを大きくしていきたい。英国とEUの間の貿易に障壁を作るべきではありません。これは、英国に拠点を置くグローバル企業に共通する願いだと思います。

9月2日には、日本の内閣官房や外務省などで構成する「英国のEU離脱に関する政府タスクフォース」が、英国やEUに対して要望書を公表しました。

ドーマー:英国やEUがビジネス環境の維持に最大限を尽くしてほしいという日本政府の要望はとても重要だと思います。英国にとっても、日本は今後の発展に欠かせないパートナーですからね。英国とEUだけでなく、幅広い関係者が納得するような結論を、我々も期待しています。その意味で日立は、日本政府の公表した要望書と基本的に同じ立場に立っています。