圧倒的に売り場面積が足りない

 問 今期から4年間の新たな中期計画では国内で500坪(約1650m2)級の大型店舗を100店に増やす目標です。ただ良品計画は00年ごろ、無理に大型店を出して、経営不振の一因になった過去があります。

 答 00年のときは能力を超える売り場をつくってしまい、縮小して不採算店を閉鎖しました。過去と現在で圧倒的に違うのは、商品力が付いて、多くの点数が売れるようになったということです。前期までの中期計画ではグローバルで面積当たりの売上高を10%上げることを目標に掲げ、達成しました。商品政策や陳列の改善の効果です。例えば、健康美容関連商品の売上高は2年前の1.5倍程度に増えており、圧倒的に売り場面積が足りないのです。

 問 流通・小売業界をみると苦戦している企業が多い印象があります。そうした中で、堅調な業績を維持できている要因はどこにあるのでしょう。

 答 まず海外事業が強いことが当社の特徴です。無印良品は今、海外で認知度がかなり高く、どこの国に出店しても、『MUJI』の潜在的な顧客がいるという状況ですね。年間100店くらいは海外でつくれると思いますが、運営の能力の問題もありますから、約60~70の巡航速度で出店しています。そのうち半分が中国です。残りは基本的に東アジア、西南アジアを中心に出店します。さらに新たな中期計画では、北米にドライブをかけます。

中国への積極出店を続ける(写真=VCG/Getty Images)

 問 海外の消費者から支持されるのはなぜですか。

 答 品質、デザイン、機能性だと思います。生活の基本となるものを扱っていて、そこに価格の合理性もある。どの国でも起きて食べて寝てという行動は変わらないので、基本的な品ぞろえは、全世界ですべて同じです。

 問 各国に合わせた現地化はしないのですか。

 答 ローカライズはこれからやっていきます。いよいよ中国では『土着化』に取り組みます。中国は今200店舗を超え、売上高も500億円を超えましたので、ようやく専用商品を作れる規模になってきたのです。今までは効率を重視して、全世界同じものを販売してきましたが、今後は個々の生活に役立つために土着化していきたい。

 例えば中国の売れ筋である水筒。日本で販売しているサイズでは小さく、中国の人は2倍から3倍の容量が欲しいという声があります。炊飯器も国内では3合程度のものまでが主流ですが、これも中国では小さい。基本的には生活文化に合わないところを修正していこうという考え方です。

「暮らし方を売る」堤氏の教え

 問 日本の小売市場を見ると百貨店や総合スーパーの低迷が一段と鮮明になっています。業界の地殻変動や消費の変化についてどのように見ていますか。

 答 百貨店はビジネスモデルが限界にきていると思います。高齢化社会になって品ぞろえの豊富さよりも便利さが求められ、コンビニエンスストアがよく利用されるのでしょう。もう一つの傾向ですが、ものを所有することにそれほどの意識がなくなってきているんじゃないでしょうか。大量陳列、大量販売というのがある程度限界にきているのかなと思います。

 問 そういう変化の中で良品計画は「モノ」をどのように買ってもらうのですか。

 答 当社は食器にしても家具にしても、いろいろなものは置いていないのです。例えば家具の専門店に行くと、ベッドでもあまりにたくさん種類があって選びにくいという声もあります。これに対して当社は、生活の基本となる本当に必要なものがほどよくそろっていて、価格のばらつきもなく、同じような価格帯で選びやすい。これが当社の独自性です。

 問 商品を選択するという機能を顧客の代わりにやってあげるイメージでしょうか。無印良品の目を通して選んだものであることに付加価値があるのですか。

 答 これが必要、このサイズがお客様にいいと考えて商品を提供しますが、購入を決めるのはお客様です。衣生食にわたって同じような考え方で提供します。無印良品を立ち上げたセゾングループ創業者の堤清二さんや、無印良品の開発に貢献したクリエーターの田中一光さんは、『ものを売っているんじゃない。暮らし方を売っているのだ』と話していました。

 そういう意味では、ぴっと感じる人には我々の商品は非常に当たるんですね。でも多くのものから選びたい人には、正直言って当たらないですよね。

 問 どこに行っても買えるような物だったら、競争力はないですね。

 答 はい。当社はすべてが自社の企画商品ですから、同じものはマーケットにない。これはやっぱり大きいですね。

 問 無印良品がスタートした当初、堤さんは製品ごとのスペックまで入念にチェックして注文をつけてきたそうですね。

 答 創設当初は商品判定会というのがあり、外部のデザイナーなどで構成したアドバイザリーボードの方々や堤さんが参加していました。ここで彼らに認められなければ商品として発売できなかった。今も月に1回、アドバイザリーボードのメンバーと意見交換があります。

 問 中国のほか、最近進出したインドなどでも将来は現地専用商品が必要になるかもしれません。無印良品の哲学や特色が薄れる恐れはありませんか。

 答 商品開発自体は、現地専用商品も含めてすべて東京本社でやります。デザインやモノ作りの考え方は変えず、全部東京でコントロールします。店舗のデザインやレイアウトもすべて東京で管理して確認しているのです。