テクノロジーの牽引役としての医療

医療にインパクトをもたらす先端技術として、どのような技術に注目していますか。

沖山氏:様々な応用にインパクトをもたらす基盤技術としては、AIとの相乗効果で新薬開発を加速する量子コンピューターや、情報管理を通じて医療の透明化につながるブロックチェーンに期待しています。また、応用技術としては、ロボット以外にも、効果的な手術のシミュレーションを可能にする拡張現実(AR)と仮想現実(VR)、遺伝子疾患から感染症まで幅広い応用が期待される遺伝子編集技術(CRISPR)、失われた運動能力や感覚能力の獲得や能力拡張の可能性をもつブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)があります。

 これら先端技術の活用は始まったばかりです。しかしテクノロジーは、研究開発に投じられた資金と人材の量に応じて、指数関数的に高度化していきます。そしてテクノロジーがテクノロジーを進化させるという「複利効果」が働くので、後からどれだけ必死になるかよりも、どれだけ早い時期に着手したかが大きな差となります。

医療分野でいち早く実用化した先端技術が、そこで培った実績とエコシステムをもとにして他分野への応用を開くという応用の連鎖も期待できそうです。

沖山氏:そうですね。遺伝子編集の応用は、医療技術を他分野展開した好例かもしれません。過去の農作物の品種改良では、種に放射線を当てて突然変異を誘発させ、たまたま生まれたよい種を選別して使っていました。現在は、ゲノムを編集し、欲しい性質を持った品種を計算ずくで生み出せるようになりました。

 医療分野では、先端技術の活用に果敢に取り組んでいます。医師で先端技術の活用を見据えたベンチャーを起業する人も少しずつ増えてきました。しかし、医者そのものが人手不足の状態です。むしろ異分野からの参入を容易にして、医療分野にかかわる技術者がもっと増えるとよいと感じています。

 この記事は、日経BizGateに掲載したものの転載です(本稿の初出:2017年8月16日)。

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