(聞き手 森 永輔)

中原さんは、今日の世界の経済状況が「借金バブル」に陥っていると懸念されています。リーマンショックの後、先進国が大規模な金融緩和にかじを切ったのを受けて、米国と中国のいずれもが債務に依存する経済の拡大に走った。新興国も旺盛な設備投資と公共投資に向かったとされています。
トルコのリラ暴落に端を発する今回の新興国の通貨安は、この借金バブル崩壊の引き金を引くことになる可能性があるでしょうか。対外債務比率の大きなアルゼンチンのペソなどが、トルコ・リラを追いかけて安くなっています。

経営コンサルタント、経済アナリスト 経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析する。近著に『日本の国難』がある。
中原:その可能性は小さいでしょう。私は、借金バブルが崩壊するとすれば、その緒を開くのは中国だと考えています。米国の家計も大きな負債を抱えていますが、その7割を占める住宅ローンは今は健全な状態にあります。住宅に関わるサブプライムローンがリーマンショックの発端となった反省から、米国の住宅ローン審査はかなり厳しくなりました。家計債務の2割を占めるクレジットカードローンや自動車ローンの延滞率が高まる懸念はありますが、せいぜい通常の不況を呼び込むくらいでしょう。
トルコ・リラの暴落が大きな注目を集めるのは、米中貿易戦争が始まったからだと思います。貿易戦争が進行するにつれ、投資家のリスク許容度が低くなっている。仮に、今と同じ通貨安が昨年起こっても、今のような動揺は起こらなかったでしょう。良い材料が出ても、悪い材料が出ても、株価は上がり、為替は安定していました。一方、貿易戦争が始まった後、特に今夏に入ってからは、良い材料が出ても株価が下がるような状態です。投資家はリスクオフ、利食いモードに入りました。
米中貿易戦争の今後の展開をどのように見ていますか。
中原:正直言って、まったく分かりません。ドナルド・トランプ米大統領が進める政策は支離滅裂で合理的に推測することができません。
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