働く社員の立場に立つ
組織運営で「ぶら下がっている社員はいない」とどこかでおっしゃっていたことが印象的でした。
大山:経営で一番大事なのは働く社員の立場に立つことです。評価を正しくすれば、人間は誰でもモチベーションが上がる。だから当社では評価することにものすごく時間をかけています。部下や同僚を含めて多面的に評価しますし、人事評価する2月は私はほとんど出張できないくらいです。目標を明確にして正しい評価をすれば、誰でも頑張ります。
その仕組みは社長が考えるんですか。
大山:そうです。人事評価委員会というのを作って、各部署から選ばれた10人で構成しています。その人たちもローテーションで代わります。社長の自己満足ではなく、社員が常に納得する仕組みを作らなければいけません。
仕組み作りにこだわっていらっしゃいますね。
大山:経営の基本です。どんな時代環境でも利益の出せる仕組みを作ることが大事です。もうけるのでなく、利益が出る仕組みです。当社はメーカーであり、ベンダーでもある。チェーンストアと直接取引できる。良い商品であれば、全国に流せる。そのために工場に物流倉庫を併設している。そうした仕組みがネット通販のビジネスでも生きます。仕組みを作り、みんなで回す。丸投げしてはダメです。
大企業病は心配していませんか。
大山:我々は原価管理にものすごくシビアな会社です。一つひとつの商品の損益管理をしっかりやっています。そういうビジネスユニットさえしっかりしていれば、規模の問題ではないと思っています。
大阪の町工場を社員1万人のメーカーに育て上げ、ベンチャーの目標とされる社長です。起業家育成にも熱心で、明るく穏やかな語り口で周囲を引きつけます。そんな大山さんに「さすがにエアコンは家電メーカーのブランドでないと厳しいのでは」とあえてぶつけたところ、一瞬殺気を感じました。自社ブランドへの矜持が見えました。
国内家電メーカーが利益を上げられなくなった理由は「中韓勢の追い上げ」で片付けられることが多い中、大山さんはガバナンスの問題だと指摘します。社名にあぐらをかいたサラリーマン気質が弱体化を招いたと看破します。その目が正しいかどうかは、初の本格的な大型家電となるエアコンの売れ行きで証明されます。楽しみです。
(日経ビジネス5月29日号より転載)
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