リストラ人材の受け皿に

最近、注力されている家電事業も本格参入は震災のころでしょうか。

大山:そうですね。相前後して大手のメーカーさんが不振に陥り、特に名だたる家電メーカーがあった大阪でたくさんの技術者がリストラされていました。当社は震災前も快適生活というコンセプトの中で家電を一部やっていましたので、彼らを採用してアイリスらしい商品開発をしようと。大手が手放した人材を我々がすくい取る。受け皿となるわけです。

確かに銘柄ごとに炊き方を変える炊飯器など、特徴のある商品が多いですね。今、家電事業の売り上げはどのくらいですか。

大山:本格参入から4年ほどですが、2017年12月期は730億円を計画し、アイリスオーヤマ単体の売り上げの半分を占める見込みです。

今年はエアコンに参入しますね。

大山:なぜ、エアコンかと言えば、LED と同じ理由です。節電ですね。家庭やオフィスで電力消費量が多いのは照明とエアコンです。インバーター技術を使って、エアコンの省エネ効果を高める。さらに人感センサーで人が来たら反応したり、スマートフォンで外出先からも電源を入れたり切ったりできるようにします。そうすることで省エネにつなげたいと思っています。

エアコンは大手メーカーが作るというイメージの製品で、名だたるブランドとの勝負となります。勝算はいかがですか。

(写真=阿部 勝弥)
(写真=阿部 勝弥)

大山:アイリスにはファンがたくさんいるんですよ。奥様方を中心に。当社の商品を信頼してくれているから、LEDだってすっと入っていった。クリーナーや炊飯器も売れています。

 家電の販売チャネルのうち、6割を占めるのが家電量販店です。一方、当社の商品の販路はホームセンターがメーンです。エアコンもそこで売ってもらいます。仮に家電量販でのシェアが3%しか取れなくても、ホームセンターやネット通販を足していけば、十分可能性はあります。一気に2割、3割のシェアは難しいでしょうが、1割は狙います。

ホームセンターもいくつか買収されていますね。小売業も拡大するのですか。

大山:小売り自体を拡大するつもりはありません。テストマーケティングの位置づけです。当社の商品の販路はホームセンターがメーンですが、『こう売りたい』という私の考えと、お店でやっている現実が、なかなかかみ合わないことがあります。実際に自分たちでやってみてうまくいったケースは『こうしたらこれだけ売り上げが上がりましたよ』と、オープンにする。そうすれば、みんな納得してくれますし、信頼関係も深まります。

小売店の利幅も分かりますね。

大山:問屋を通さないのが当社の強みです。売れたものにしか発注が来ないから基本的に週単位で小売りの販売トレンドが分かります。こうしたデータは新商品の開発にも役立てています。

家電市場全体では成長は頭打ちです。アイリスはなぜ急成長を果たせるのでしょう。

大山:お客様が『なるほど』と思う商品を値ごろな価格で提供することに尽きると思います。生活者の視点で『なぜ?』を繰り返す。そうした『ユーザーイン』の思想で開発してきたことが強みだと思います。

アイリスの開発はスピードがあって変化に対応しているともいわれますね。

大山:実際は開発スピードは速くもなんともない。何が速いかと言えば、ジャッジですよ。

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