収納用品やペット用品のメーカーとして知られるアイリスオーヤマが家電事業を拡大している。炊飯器や布団乾燥機など小型家電に続き、今春にはルームエアコンに参入した。大手メーカーを辞めた技術者を受け入れ、停滞市場で異彩を放つ。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=阿部 勝弥)
(写真=阿部 勝弥)
PROFILE
[おおやま・けんたろう]1945年生まれ。64年大阪府立布施高等学校卒、同年7月父の急死で家業を継承し大山ブロー工業所代表者に就任。71年法人化に伴い、代表取締役社長に就任。プラスチックの成型技術を生かし、養殖用のブイや育苗箱などを開発しヒットする。水産や農業などが盛んな東日本に拠点を作り、89年本社を仙台市に移転。91年アイリスオーヤマへ社名変更。大阪府出身、71歳。

横並びが家電業界をダメにした

収納のクリアケースやペット用品からLED(発光ダイオード)照明まで。いろんな商品を提供していますね。アイリスは今、一言で言うと何の会社ですか。

大山:東日本大震災の前までは、快適な生活を支援することをコンセプトにする商品を扱う会社でした。園芸やペット関連、収納容器。余暇を豊かな気持ちで過ごすための商品であったり、日々の生活を快適に過ごすための商品です。

 震災後に会社の進むべき道を少し変えました。あの震災では、仙台に本社を置く当社に対しても、あるいはこの地域全体に対しても、全国からたくさんの支援を頂きました。皆さんに少しでも恩返ししたい。ならば、私たちができる範囲内で、日本の課題を解決してみようと。

日本の課題といっても、いろいろありますね。

大山:例えば、電力。震災後に原子力発電所の稼働が止まり、計画停電が繰り返されましたね。でも、当社にはLED照明があります。震災の前年に本格参入していた新規事業ですが、節電効果の高い特徴を生かせば、電力不足という課題を解決できる。そう考えて、一気にアクセルを踏んで事業展開のスピードを速めました。

 震災後に参入した精米事業もそうです。これはまさに米どころの東北の農家の復興につながります。ただし、単なる支援ではいけません。国の復興予算が消化されれば、終わってしまいます。当社は思いつきやボランティアではなく、事業として取り組みました。低温製法という新しい方法を取り入れて、他のお米と差異化したことで、おかげさまで、今ではコンビニエンスストアで展開するほど広がっています。

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