イノベーションの源である大学において、日中間に10倍の差がついているわけですね。

:中国は数を増やすのと並行して、質の向上も目指しています。教育部と財政部、国家発展改革委員会が2017年に共同で「二つの一流」という政策を発表しました。世界の一流と伍す大学を42、学科を95、新たに作ろうというものです。

沖村:日中間で差がついているのは、大学や学生の数だけではありません。中央政府と地方政府が負担する大学への交付金は2017年現在、中国は25兆円、日本は9兆円です。2003年には日中ともに5~10兆円でほとんど差はありませんでしたが 、中国の交付金はどんどん増えていきました。

 この背景に、中国の科学技術進歩法の存在があります。「国が科学技術の経費に投入する財政資金の増加幅は、国家財政における経常収入の伸びの増加幅を超えるものとする」と定めるもの。中国経済が拡大し、政府予算が拡大すれば、それを超えるスピードでイノベーションを促す資金が大学に投入されるわけです。

 さきほどお話しした企業との共同研究などがもたらす研究開発経費も大きな金額になっています。中国のベスト3は清華大学(1494億円、いずれも2016年)、浙江大学(1167億円)、北京大学(703億円)といった具合です 。日本の大学は、1位の東京大学でも795億円、2位の京都大学で529億円にとどまります。

 さらに、大学に通うのにかかる費用も抑えています。北京大学を例にとると、年間36万円あれば、アルバイトをすることなく大学生活を送ることができます 。学費は5000元、寮費(全寮制)が1万元、食費(学食を利用)が約6000元。しめて36万円です。

 こうした取り組みの結果、2017年の世界大学ランキングで中国の大学が12校ランクインしました 。日本の大学は8校にとどまります。ちなみに清華大学(24位)と香港大学(27位)が、日本の1位である東京大学(34位)より上位に位置づけられています。

世界ランキングでのシェア拡大
出典:QS World University Ranking 2017
出所:科学技術振興機構

交流がイノベーションを生む

日本もイノベーションを生み出す力の強化が求められています。

沖村:おっしゃる通りです。そのため、われわれ科学技術振興機構は2014年から「さくらサイエンスプラン」に取り組んでいます。中国の大学生をメインとする優秀な青少年に日本を短期訪問してもらい、日中の大学生が交流する。日本の大学や研究機関を訪れてもらい、研究に関する情報交換をする。イノベーションを生み出すのに海外との交流は欠かせません。まずは、その出会いの場を設ける。

 2012年に日本が尖閣諸島を国有化して以降、日中関係は非常に悪化していました。ある調査では、日中の回答者の9割が相手の国を嫌い合っているとの結果も出ていました。こうした事態もさくらサイエンスプランを始める動機の一つでした。ドイツとフランスが第2次世界大戦後、若者たちが集う青少年交流を実施、緊張を和らげるのに役立てました。これを参考にしています。

 この趣旨は次第に拡大・発展し、今は「アジアの若者」を対象にしています。2017年度はアジア35カ国・地域から約6600人(中国からは約2100人)の若者が日本を訪れました。

 成果も出ています。日本に好印象を抱いた参加者は99%。再来日を希望する人は8割以上に上ります。

 2018年度は、中南米6カ国を対象に加えます。招待者も7000人規模に増やします。私はこの数を将来3万人に増やす希望を抱いています。