大学と企業はどのような形で協力しているのですか。

秦 舟
科学技術国際交流センター 国際交流事業部 副参事 1976年、中国北京生まれ。1994年に来日。2008年に、東京大学総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程単位取得満期退学。2008年3月より科学技術振興機構中国総合研究交流センターフェロー。 「躍進する新興国の科学技術」、「主要国の科学技術事情」、「中国の科学技術力について~世界トップレベル 研究開発施設~」、「中国主要四大学」などの製作に携わる。2018年4月、科学技術国際交流センター副参事、主任調査研究員に就任。

:一つは、〇〇パークを介するもの。科学技術の発展を目的とする特区のようなものです。大学が主催するサイエンスパークに企業を集めて協力するケースや、国や地方政府が運営するハイテクパークに大学と企業が集うケースなどがあります。2つ目は、ベンチャーの起業。大学で働く研究者や学生と企業が新たにベンチャーを立ち上げる。研究者と学生が自ら起業するケースも増えてきました。第3は市場を通じた協力体制の構築。技術取引所と呼ばれる市場を通じて、大学と企業が技術を売買する仕組みが出来上がっています。

 大学が主催するサイエンスパークの場合、入居する企業の性質は大学が主体的に決められます。どのような技術を持った企業か、どのくらいの規模の企業か、などですね。大学側は①中央政府から認可を受けることで得られる収入、②入居する企業が支払う家賃、③研究者や学生が起業した企業が上げる収益の一部などが得られます。

 一方、入居する企業は多くの場合、税制上の優遇措置を受けられます。大学にいる優秀な人材をスカウトできるのも起業にとって大きな魅力です。

大学研究者がビジネスに積極参加

沖村:大学は、企業との連携を促し便宜を図る産学連携の専門部署を設けており、起業からの様々な相談を受け付けています。例えば浙江大学が主催するサイエンスパークに日本の機械メーカーが入っています。同社は中国で飲料の自動販売機などを売っている。同サイエンスパークは同社が販売計画を立てる手伝いもしたそうです。

地元市場の動向は、地の利に勝る地元の大学の方が外国企業よりもよく知っているわけですね。

沖村:はい、そうです。

 それになにより、日本の大学は消極的です。まず、企業は大学のどの部署にアクセスすればよいのか分かりません。大学が企業に提供するメニューも明確ではない。これに対して、中国の大学は「やりまっせ!」と、飛びついてくる感じです。

 企業との協力は、大学の研究者に金銭的なメリットをもたらします。日々の交流の中で共同研究などの案件が持ち上がる。企業はその成果を製品にして販売する。そこから上がる収益の一定割合が大学研究者の懐にも入ります。ウィン・ウィンの関係が出来上がるわけです。

米山:鄧小平はこの意味でも資本主義を取り入れたわけです 。インセンティブがなければ人は動きません。

:そうです。研究成果がビジネスにつながり、自分も豊かになれるのであれば、研究者はこの案件に参加し続けます。そうなれば、研究の成果をさらに発展させることができる。何のインセンティブもなければ、研究者が参加し続けるのは難しいでしょう。

米山:研究者がビジネスに積極的に関わる動向を中国では「下海(かかい)」と表現します。大学研究者がビジネスの「海」に入る、という意味です。