中国企業の成長ステージが上がり、独自のイノベーションを生み出すことができるようになった。その原動力の一つが大学だ。中国の大学でいま何が起きているのか。中国の大学は日本の大学と何が異なるのか。科学技術振興機構で日中交流に携わる皆さんに聞いた。

(聞き手 森 永輔)

左から、秦舟氏、沖村憲樹氏、米山春子氏(プロフィールは後述)

中国企業の成長が進み、自前のイノベーションを起こすステージに至りつつあります。何がけん引役になっているのでしょう。

沖村:私は大学と地方政府だと思います。中国における大学と企業の関係は、日本とはずいぶん異なります。

どこが違うのですか。

米山春子(よねやま・はるこ)
科学技術振興機構 中国総合研究・さくらサイエンスセンター副センター長 お茶の水女子大学で理学博士学位を取得。がん研究会研究所、理化学研究所を経て、2008年科学技術振興機構に。フェロー、調査役、参事役を経て現職

米山:日本では企業の中にあるR&D(研究開発)の機能を大学が請け負っているのです。大学に勤める研究者や学生がベンチャー企業の起業に積極的であるのも日本と異なる特徴でしょう。

 まず、中国企業の多くは社内にR&Dの部署を抱えていません。この役目を大学が果たしているのです。

 かつては政府がR&Dの機能を担っていました。それを鄧小平が改革開放政策を進める中で大学に移管したのです。当時の政府は「四つの現代化」--工業の近代化、農業の近代化、科学技術の近代化、国防の近代化--を進めて豊かな社会を作ることを目指しました。これに、大学を貢献させることにしたわけです。

沖村憲樹(おきむら・かずき)
科学技術振興機構 中国総合研究・さくらサイエンスセンター 上席フェロー。1963年、中央大学卒業。1966年、科学技術庁に入庁。官房長、科学審議官を歴任したのち、1999年に退官。科学技術振興事業団の理事長、科学技術振興機構の理事長を経て、2007年から現職。

沖村:新しい技術を開発して、産学連携を通じて企業に提供し、社会の進歩に貢献することを、大学は法的な義務として負ってもいます。中国教育法が定めているものです。この点も、研究開発と人材育成を主体とする日本の大学と異なりますね。