需要増を見越して販売、シェア90%の「唐揚げ粉」

「モダン・トレード」が主流になった場合、味の素はどのような強みを持つのでしょうか。

尾崎氏:そこは難しい点ですね。正直、まだ強みを確立できているとは言えません。ただし、日本国内では味の素自身がモダン・トレードのスペシャリストと言われています。「店舗の棚のどこに配置すればモノがよく売れるのか」といったことを熟知しており、それを基にスーパーなどに提案できます。在庫の持ち方もそうです。その知見をフィリピン人の営業担当者に“インストール”している段階です。

なるほど。モダンにはモダンの強みがあると。

和田氏:はい。フィリピンではトラディショナル・トレードとモダン・トレードで営業担当者を分けています。モダン・トレードの担当者には、味の素が日本で長年培った知見を定期的に、具体的に教育しています。

トラディショナル・トレードでは、写真のようなサリサリストアや青空市場の店との取り引きが中心。営業担当者が店員に商品紹介をする
トラディショナル・トレードでは、写真のようなサリサリストアや青空市場の店との取り引きが中心。営業担当者が店員に商品紹介をする
モダン・トレードでは、スーパーやコンビニとの取り引きが中心。上の写真では、うま味調味料の味の素が整然と並べられている
モダン・トレードでは、スーパーやコンビニとの取り引きが中心。上の写真では、うま味調味料の味の素が整然と並べられている

味の素がフィリピンで注力している商品は。

和田氏:日本の唐揚げ粉にあたる「CRISPY FRY (クリスピーフライ)」「TASTY BOY (テイスティーボーイ)」という2つのブランドです。クリスピーフライは2004年から、テイスティーボーイは07年から販売しています。

陳列棚に並ぶクリスピーフライとテイスティーボーイ
陳列棚に並ぶクリスピーフライとテイスティーボーイ

日本では多くのメーカーが唐揚げ粉を販売しています。フィリピンの状況は。

和田氏:我々が販売を開始した10年ほど前は、一般家庭の食卓に出る揚げ物は「素揚げ」が中心で、味付けも塩やこしょうなど簡単なものでした。揚げるのも、お肉ではなく、魚。高価なお肉にはなかなか手が出なかったのです。

 ただし経済発展に伴い、「ハレ」の日にはお肉を食べることが増えました。人気メニューは唐揚げです。ファストフード店などに行って唐揚げを食べるのが、フィリピン人の楽しみなのです。

 私たちは、自宅でもファストフード店のような味付けの唐揚げを食べたいという需要があると考えました。10年ほど前は唐揚げ粉の市場は大きくありませんでしたが、強い競合がいない中、私たちは先を見越して商品を販売しました。現在では唐揚げ粉の市場で、2つのブランド合計で90%以上のシェアを誇っています。

90%とは驚きです。

和田氏:はい。時代の先をうまく読めたことに加えて、簡単に料理できる点を徹底したからでしょう。卵などを使う必要はなく、粉をまぶして揚げれば出来上がりです。

 私たちは、ある国や地域で事業を展開するとき、現地の生活を徹底的に調べます。住民の台所まで入り、どんな風に料理をしているのか観察するのです。すると、フィリピン人の母親は調理にかける時間が長いことが分かりました。ですがこの価値観は変わるでしょう。私たちは、唐揚げ粉のような商品を販売することによって、彼女たちが少しでも楽になるような手伝いをしたい。

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