(聞き手は坂巻正伸)
これじゃいけない、ではどうする?
中澤さんには、弦楽器専門店の日本ヴァイオリン社長に就任してまもなくの2014年に「日本のクラシック音楽の危機」についてお話をうかがいました(キーパーソンに聞く「ストラディヴァリウス、貸します」)。 大ホールでのクラシックコンサートは盛況だけれど、高額チケットを買っている人たちはごく限られていて……。
中澤:わずか「1%」のファンが支えている。そんな危うい状況を何とかするには、もっと多くの人たちにクラシックの良さを知ってもらわなければいけない。そう考えて様々な取り組みを続けています。
小規模のコンサートを各地で展開したり、若手演奏家にストラディヴァリウスなどの名器を無料で貸し出す活動をされたり。
中澤:はい。そうした活動をしながらずっと準備を続けてきた、とっておきの企画がついに実現します。
「東京ストラディヴァリウス フェスティバル2018」ですね。開催おめでとうございます。
中澤:ありがとうございます。
ストラディヴァリウスと言えば、一挺数億円もするヴァイオリンの最高峰。クラシックに詳しくない人でも……。
中澤:「とんでもなく高額な楽器」としての知名度は抜群です(苦笑)。でも、一般の方が実際に見たり、その音色を聴いたりする機会は少ない。
今回のフェスティバルでは、21挺のストラディヴァリウスが東京に集結します。これだけの数が集まるのは、本場ヨーロッパでも滅多になく、アジアでは初めてのことです。
音楽フェスティバルというと、国内外の有名アーティストが一堂に会して、あるいはいくつかのステージに分かれて、演奏を繰り広げるイメージですが……。
中澤:ロック、ジャズ、クラシック、いろいろな分野で多くの人たちに音楽を楽しんでもらおうと様々な取り組みが行われています。素晴らしいことです。では、そんな中でヴァイオリン業界は何をしてきたかと言うと……。
と言うと……。
中澤:恥ずかしながら何もしてこなかったんです。例えば、ストラディヴァリウスが1挺、日本に来た。すると、いわゆる専門家が集まってそれを愛でるといったことにとどまっていた。
これじゃいけない。では、どうする?
そんな思いから今回のフェスティバルの企画を考えました。5年前、前回のインタビューより少し前のことです。
「やることはたくさんあります」といっていた1つがこれ。
中澤:そうです。
ヴァイオリンが主役。その魅力をたくさんの人に存分に味わってもらって、好きになってもらいたい。それには、ここでしか味わえない特別な設えが必要です。
ならば、最高峰のストラディヴァリウスだ。それも1挺、2挺ではなく、20挺以上は欲しい。
相当に高いハードルですね。

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