黒田和生氏(左)とレスター・シティの岡崎慎司選手
黒田和生氏(左)とレスター・シティの岡崎慎司選手

 台湾サッカー協会のユース育成統括兼U-13/ U-18代表監督であり、岡崎慎司(現レスター・シティ)選手を高校時代に指導した黒田和生氏にお話しを聞く第3回目。最終回は台湾サッカーの現状や海外に出てみて分かった日本サッカーの問題点などについて聞いた(第1回目の記事第2回目の記事参照)。

 

監督は現在、台湾で指導されていますが、サッカーや文化の違い、また台湾の現状や課題をお聞かせください。

黒田:台湾はサッカーという観点では、日本の35年から40年昔の状態です。日本はJリーグができて20年ですから、その15年前というところでしょうか。要するに僕らが学生のころ、日本リーグの人気が低迷し、日本代表の結果もまだまだ出てこない、そういう現状に似ています。

 台湾の人気スポーツといえばナンバー1、ナンバー2は野球とバスケットです。大きく水が空いて3番目がサッカー。台湾の人が健康、スポーツに関して関心がないかというとそんなことはありません。「養生」という言葉が街の至る所にあり、食べ物、睡眠、体を動かすことに興味のある国民です。

 ただ、チームゲームで何かを達成するというのは苦手なようですね。一人でジョギングする、二人でバドミントンをする、卓球をするとか、そういうのはいいんですよ。マラソンも各都市で大きなイベントがあり、台北マラソンなんてすごい人数が参加しますからね。日本からも何千人も行っています。でもチームゲームはもうひとつ関心がないようで、サッカーが馴染みにくいところではあります。

 そして施設もないのです。学校の中に校庭はあっても、トラックがまずは優先され、その中でサッカーが出来るようにはなっていても草が生えて荒れています。施設がなく、競技人口も少ないから、チームも弱い。日本のサッカーは「夢があるから強くなる」と、川淵[三郎・元日本サッカー協会(JFA)会長]さんが言い出した理念がありますよね。僕はその理念が大好きなので、台湾に行って夢を持とうよとみんなに言うんだけど、夢なんかより現実のマネーだよと言われます。

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