台湾サッカー協会のユース育成統括兼U-13/U-18代表監督である黒田和生氏にお話しを聞く第2回。滝川第二高校の監督だった時代に指導した岡崎慎司(現レスター・シティ)選手とのエピソードなどについて聞いた(第1回目の記事参照)。

岡崎選手の才能を伸ばすために、どのようなことをされたのでしょうか?

<b>黒田 和生(くろだ・かずお)</b><br />1949年3月8日生まれ。岡山県倉敷市出身。 岡山県立倉敷青陵高校を卒業後、東京教育大学に進学し、選手としてプレー。その後、神戸FCコーチに就任し、同クラブの監督も務める。滝川第二高校の監督を経て、2007年にヴィッセル神戸の普及育成事業本部長に就任。2009年からはユース(U-18)監督も兼任した。2012年に台湾へ渡り、ユース育成統括兼U-13/U-18代表監督として、現在も指導にあたっている。
黒田 和生(くろだ・かずお)
1949年3月8日生まれ。岡山県倉敷市出身。 岡山県立倉敷青陵高校を卒業後、東京教育大学に進学し、選手としてプレー。その後、神戸FCコーチに就任し、同クラブの監督も務める。滝川第二高校の監督を経て、2007年にヴィッセル神戸の普及育成事業本部長に就任。2009年からはユース(U-18)監督も兼任した。2012年に台湾へ渡り、ユース育成統括兼U-13/U-18代表監督として、現在も指導にあたっている。

黒田:まず私の指導には「フタをしない」という大原則があります。その上で、「心・技・体」と言われるように、ある部分だけ伸びても、ある部分に欠陥があれば一流選手としてはダメなわけです。岡崎は滝川第二高校(滝二)に来るのだから、ある程度のレベルにはいるわけですが、一番足らないのは考える力でした。考える力をどうやってつけるかというのは、僕の大きなテーマでしたね。

 学校の成績は1つの目安ですよね。記憶したり、判断したり。それとは別に感性というものがあります。芸術的なもので、クラシックを聴いたり、絵を見たり、綺麗な風景を見たり。そういう感性の部分も大切にしようと考え、選手に対しては本を読めとやかましく言いました。活字を読み進めると、間、間にイメージが出てくるんじゃないかと。読んだら感想文を書き、できれば感想を話すようにさせました。

本とはどういうジャンルのものでしょうか?

黒田:なんでもいいんです。無理やり1カ月に1冊読むという課題を与えて、そして感想文を書かせる。これは選手にとって苦痛だったでしょうね。

サッカー部の活動とすれば珍しいですね。

黒田:読むのは偉人伝がいいよと。西郷隆盛だったり、ベートーベンだったり、織田信長だったり、そういうアドバイスはしました。ですが、ジーコ物語とかマラドーナに関するものとかサッカーの本ばかりを読んでくるんです(笑)。1年に12冊読むわけだから、12冊のうちの2~3冊はそれでもいいけど、後の10冊は違う本を読めよと。

偉人伝を薦めた理由はなんだったのでしょうか?

黒田:今でいう成功体験というのでしょうか。偉人も苦労して、努力したという内容ですよね。世のため、人のために彼らは仕事をしてきたから、人々は偉人として彼らを褒め讃える。だから君たちも将来は人のため、世のために役立つ仕事、姿がいいんじゃないかと伝えたい思いがありました。

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