植草氏:大企業の稟議の仕組みもイノベーションを阻害しているでしょう。稟議があるのは失敗をしたくないから。だから、徹底的に石橋を叩いて渡るわけです。イノベーションを起こすなら、できるだけ早く失敗する方がいい。学んだことを、次のイノベーションに活かせるからです。

 逆に何年も投資を積み上げていくようなプロジェクトでは、途中で失敗できなくなってしまいます。大企業の研究所には10年間塩漬けのプロジェクトがたくさんあります。たくさん投資しているので「もう無理です」と言えなくなっているんです。空振りしてもいいから、打席にたくさん立つほうがイノベーションは起きやすいでしょう。

オープン編集会議メンバーと議論

杉田氏:小さな失敗がポイントですね。大きな失敗を一度すると、その後、挑戦する意欲がなくなってしまいます。

 これは私の持論ですが、日本では、技術も人材も、様々なアセットが大企業に集約し過ぎていると思います。従来と同じ観点でアセットを抱え込み続けていることが、イノベーションを阻害しているのではないでしょうか。これらのアセットを、どうやって(社会全体が)オープンに使えるようにするのかを考えるべきかもしれません。そのためには、日本企業は何が競争領域で、何が協調領域かを切り分けていくことが必要でしょう。競争領域以外は、外部と協調すべきです。

小西光春氏(オープン編集会議メンバー/オムロンサイニックエックス):しかし、米国、特にシリコンバレーでは協調よりも競争が厳しい気がします。例えば、地図領域で激しく競争する米グーグルと米アップルのように。

杉田氏:それは地図が競争領域だからでしょう。彼らは自分たちの価値を見定め、どこで戦うのかがはっきりしています。

そもそもイノベーションは必要?

小西氏:やや視点は異なりますが、そもそもなぜ、イノベーションが必要なのでしょうか。イノベーションは突然変異で隕石が落ちてくるようなもの。生きるか死ぬかのサバイバルの必要がなければ、イノベーションがなくてもいいのではないでしょうか。

植草氏:必要に迫られないとイノベーションが生まれないというのは、その通りでしょう。

杉田氏:そのような考えは確かにあります。ただ、もう1つ、自分が生きる中で「これがこうなればもっといいのに」と思えるかどうかも重要でしょう。社会の価値観を大きく変えることにチャレンジしたい、というモチベーションは、イノベーションを生み出す大きな原動力になるように思います。生きるか死ぬかのサバイバルになってからでは、遅いのではないでしょうか。

ここで紹介したのは、オープン編集会議メンバーによる取材内容の一部です。イノベーションについては、引き続き読者の皆さんとともに、ユーザー参加型の新メディア「日経ビジネスRaise」で議論していきます。オープン編集会議のRoom No.03には、ボストン コンサルティング グループの杉田氏と植草氏がゲストコメンテーターとして参加します。Raiseの「オープン編集会議」に寄せられたご意見は、日経ビジネス本誌7/23号の特集「イノベーション・イリュージョン(仮)」に反映していきます。

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