なぜ、日本では大化けするスタートアップが少ないのか

参加者からの質問に答える村田氏

小西光春氏(オムロンサイニックエックス)日経ビジネスオンラインの記事で、ダイソン創業者のジェームズ・ダイソン氏が、「VCは不要で、銀行から資金を借りるべきだ」と言っていました。こうした意見を、どう思いますか。

村田氏:資金をエクイティ(株式)ではなくデット(負債)で調達して、誰にも一株も渡したくない人はいるし、そういう考え方もあるでしょう。歴史的に未上場の企業もたくさんあります。自己資金で会社を作って、外部資本が当面入らないステージというのもあります。そういう前提からすると、自分が100%株式を持っているタイミングはあるし、稼げればそのままいけますよね。

 (スタートアップが)銀行からお金を借りる仕組みも整ってきています。4000万~5000万円くらいならば、個人保証なしで貸してくれる金融機関も出てきました。ただ、中長期的に考えると、外部の目があってガバナンスがしっかりしていないと、企業は大きく成長できないと思います。だから、資金調達という意味合いだけではなく、しっかりとしたガバナンス体制を作るためにも、どこかのタイミングで自分が持っている株式を希薄化したほうがいいと僕は思います。

小西氏:米シリコンバレーに比べると、日本では大化けするスタートアップが少ないように思います。その原因をどのように見ていますか。

村田氏:シリコンバレーとの比較では、起業家の数も質もインベスターの数も質も圧倒的に不足していると思います。そもそも、日本ではチャレンジする人があまり尊敬されません。

 例えば、日本では独立する人のことを、“脱サラ”と言う人もいますよね。まるで、サラリーマンであることが社会の前提であるかのように。しかも、成功している起業家に対して、「荒稼ぎしている」といったネガティブなフレーズが投げかけられることもあります。

 会社を作って雇用を生み出した人がリスペクトされる土壌は昔の日本にもあったはずですが、いつしか、大成功している起業家は何かインチキをしているのではないか、といった偏見が生まれてしまいました。だから、起業しようというチャレンジする人への共感が少ないと思います。

 本来は、起業家に対してもっと“ヘルシーな嫉妬”が生まれる環境が必要だと思います。起業して成功した人が周りにもっといれば、起業を目指す人は増やるはずです。「あいつが上手くいったんだから、俺にだってできるはずだ」という気持ちが、どんどん生まれることが必要でしょう。

 そういう環境ができあがっているホットスポットが、シリコンバレーであり中国の深圳です。先日、メルカリが上場したことで、ストックオプションを持っていた社員たちが、大きな上場益を手にしたはずです。そういう人たちがどんどん増えて、ヘルシーな嫉妬が広がるべきだと思います。

山下 雄己氏(電通国際情報サービス):大企業の中で新規事業を立ち上げたりする人を「イントレプレナー(社内起業家)」とも言います。イントレプレナーとスタートアップの創業者の違いは、どこにあると思いますか。

村田氏:結局、誰がリスクをとり、誰が経営や事業の最終判断をしているか、だと思います。スタートアップの場合、お金がなくなっても、チームのメンバーが離脱していっても、創業者自身が何があってもしがみつくという覚悟があれば、継続するんです。自分自身が最終意思決定権者であるから、自分が「やめる」と言わない限り続けることができます。

 大企業でも、大企業のブランドがあるからその事業をやっていこうということではなく、自分がその事業をやりたいからやるんだ、と腹をくくっていることが大切だと思います。

ナカタ・マキ氏(Maki&Mpho):VCの観点から見て、どのような製品やサービスの分野に今後の可能性を感じますか。

村田氏:僕らもよく、今後、世界に通用するプロダクトは何かと議論するのですが、ブロックチェーンや暗号通貨の分野では市場機会はたくさんあると思っています。あとは医療分野ですね。

 ほかにも、市場のゆがみや非効率な取引慣行といった「負の構造」がある分野は、イノベーションが起きる余地がたくさんあると考えています。例えば、魚の卸売市場とか。詳細はまだお話しできませんが、多くの人が気付いていない分野はまだまだありますよ。

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