「日本の社会は自己評価が低すぎる」「失敗しようが大企業は行動に移すべきだ」――。
日経ビジネスはこのたび、「イノベーション」について読者とともに考えるユーザー参加型のプロジェクト「オープン編集会議」を開始しました。冒頭の意見は、先に公募した「オープン編集会議メンバー」たちによる、「日本のイノベーションは停滞している」という編集部が設定した仮説に対する意見です。
5月25日、日経ビジネスオンラインに「1億円を借りれば、『ダイソン』を作れる」という記事を掲載し、オープン編集会議メンバーを公募しました。多数の応募者の中から選ばれたオープン編集会議メンバーの方々は、以下の通りです。
■オープン編集会議メンバー(50音順、敬称略)
- 木戸 美帆 日産自動車
- 國府田 遼 東芝デバイス&ストレージ
- 小西 光春 オムロン サイニックエックス
- 佐藤 類 サイバーステップ
- 柴崎 紘基 三菱ケミカルホールディングス
- 角岡 幹篤 富士通研究所
- 高尾 壌司 ニッセイ・キャピタル
- 高野 慎太郎 Makership
- 田上 光一 C Channel
- 近田 侑吾 リンカーズ
- ナカタ マキ Maki & Mpho
- 額田 純嗣 三越伊勢丹
- 林 龍平 ドーガン・ベータ
- 福井 崇博 日本郵便
- 藤井 友香 健康増進コンサルタント
- 藤本 浩史 ボストン コンサルティング グループ
- 山下 雄己 電通国際情報サービス
- 山本 将裕 NTT東日本
6月6日に日経BP社で実施したキックオフ会議では、「日本のイノベーションは停滞しているか?」を議論のきっかけに、「イノベーションの阻害要因は何か」などについてグループに分かれて議論しました。以下ではその議論の様子の一端を紹介します。

日本のイノベーションは停滞している?
日経ビジネス編集部はまず、オープン編集会議メンバーにイノベーションに関する問題意識をストレートに投げかけた。この仮説にオープン編集会議メンバーの約7割が賛同。つまり、「日本のイノベーションは停滞している」と感じていた。まずは、その理由を聞いてみた。
「実体験として社会でイノベーションを感じることが少ない。挙げるとしても携帯電話やパソコンほどしか思いつかないし、これらは日本発じゃない」。こう率直な意見を投げかけたのは額田純嗣氏(三越伊勢丹)。そもそもイノベーションは頻繁に起きるものではないという主張だ。
新しいモノを生み出す意識が少ない
さらにストレートな意見を語ったのが田上光一氏(C Channel)。「そもそも、“日本のイノベーションは”という議論の前提自体が視野を狭めているのではないか。イノベーションは日本で生まれなくても、海外で起きて日本にどんどん入ってきている。日本という枠組みではなくて、もっと海外と協力して作っていくことが必要ではないか」と話す。
他方、藤本浩史氏(ボストン コンサルティング グループ)は、公募の際に「日本のイノベーションは表向きは停滞しているように見えるが、背後ではその創出能力は継続的に向上しており、徐々に成果が顕在化しつつあると考えている」という考えを寄せてくれた。そのうえでキックオフ会議では、「日本はモノづくりが強く、優秀なエンジニアが比較的メカ(機械)分野に集中してきた。ハードウエアとソフトウエア、ビジネスモデルの組み合わせが重要になってきているときに、日本はソフトウエアやビジネスモデルにあまり力を注いでこなかった」と分析した。
もちろん、「日本のイノベーションが停滞しているか」という問いに賛同しないメンバーもいた。高尾壌司氏(ニッセイ・キャピタル)は、「日本のイノベーションは衰退していないと思う。ベンチャーに投資する立場から見ると、既存のソリューションより少なくとも10倍以上の効率化を実現したり、“nice to have”ではなく“must have”を実現したりするイノベーティブなサービスは、ものすごく生まれている」と話す。
小西光春氏(オムロンサイニックエックス)も、「日本はイノベーションがないわけではない」としつつ、「スピードが遅すぎる」と指摘。「高度経済成長期に比べて、社会が成熟しすぎているのが一因だ。また、他者を気にしすぎて破壊的な取り組みには消極的だ」と続けた。