死屍累々の挑戦の先に生まれる、破壊的なビジネス
難題がありそうなので、スマートコントラクトの採用に踏み出すのにためらう企業も出てきそうです。
柳川:国際競争という観点から見ると、この種の法制度の整備を早くできる国とできない国が出てくると推測しています。電子政府化の推進にいち早く舵を切り、ブロックチェーンを活用するエストニアは、法制度を素早く整備しつつある国の好例です。法制度を素早く整備し、スマートコントラクトが法的に認められやすい国が出てくると、その国では当然、スマートコントラクトを絡めたサービスが進みます。そうした国に、先進的な企業がこぞって集まってくるでしょう。
そう考えると、日本としても国際競争に乗り遅れることはできないはずです。法制度を整備しようとする国に対抗する形で、日本も変化していかねばならないかもしれません。
今後10年くらいのスパンで見ると、ブロックチェーンが社会や産業に大きなインパクトを与えるようになると思いますか。
柳川:大きなインパクトを与える確率は、かなり高いと考えています。おそらく、ビジネスやサービスのスタイルを大きく変えていくでしょう。
先ほど引き合いに出したインターネットで考えてみると、単純なインターネットだった世界と、スマートフォンやタブレットが登場した世界は随分違います。技術的には大きなジャンプではなかったかもしれませんが、スマートフォンやタブレットといったモバイルの登場によって、インターネットの世界に桁違いの変化が生じました。そこには、サービスの提供で大きなジャンプがあったと思います。こうしたジャンプには、一にも二にもスティーブ・ジョブズのアイデアが大きく貢献したのは言うまでもありません。もちろん、大量のデータを素早く無線で伝達できるようにした、無線技術の進展と無線環境の整備が進んだことも重要でした。
ブロックチェーンでも、今後大きなジャンプが起こると思います。ただし、既存サービスの延長線上では、どのようなジャンプがあるのかを見通すのが困難かもしれません。
だからこそ、ブロックチェーンの可能性を見通す上で、実証実験に踏み出す意義があるということですね。
柳川:そうです。ブロックチェーンは汎用的な技術なので、いろいろなことに使えるんです。ただ、いろいろ使えるというものほど、「これだ」と明確に分かる使い方を見極めるのは簡単ではありません。そういうものだからこそ、実証実験もそうですが、新しいビジネスにチャレンジすることが必要なんだと思います。
様々なベンチャーが登場し、ブロックチェーンを活用するいろいろなアイデアでビジネスに挑むことが重要です。実証実験やビジネスの規模が小さくても構いません。挑戦者の大部分は失敗するかもしれません。しかし、過去を振り返ってみたとき、世の中を変えるビジネスモデルで成功を勝ち取った企業の裏側には、何百倍もの失敗があります。
「こんなのがビジネスになるのか?」と現状では理解しがたいアイデアは、往々にして見下されがちです。しかし、「こんなのが」というようなアイデアの積み重ねこそ、飛びぬけたアイデアが生まれるために必要な土壌です。
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