柳川:新しいテクノロジーを事業に導入するとき、まず「様子見」、次にいろいろな「実験を進める」、そして「製品化やサービス化」といった段階を経ると思います。1年少し前からは、様子見の段階にあった人たちが、次の段階である実証実験に乗り出してきています。実証実験については、仮想通貨を含め金融分野で以前から進んできましたが、全体の傾向として金融以外の分野での実験が増えてきている印象があります。ブロックチェーンの技術自体の開発がかなり進んだことも、実証実験が盛んに行われるようになった背景にあるのかもしれません。
実証実験を通じ、ブロックチェーンができることを確認し、どのような状況でブロックチェーンの利用が効果を発揮するのかといったことを、ブロックチェーンの技術的な特徴を踏まえつつ検証しています。
大切なのは、ブロックチェーンでやりたい「何か」
ブロックチェーンは活用範囲が広いだけに、一体どのようなことに利用すれば効果が大きいのかが、かえって分かりにくい印象があります。
柳川:ブロックチェーンそのものへの理解を深める以上に、「ブロックチェーンで何をやるか」について、もっと考えるのがよいでしょう。「何か」をしたいから、ブロックチェーンを使うという考え方です。
ブロックチェーンを使って、将来、どのようなサービスが現れるのか、どのくらいビジネスが拡大するか等、技術の応用を考える際には、ブロックチェーンの細かい技術的な特性や違いなどよりは、むしろ、ブロックチェーンが「本質的にどういうアイデアに向いているか」ということが重要なポイントとなります。特に、ブロックチェーンを絡めた新しいビジネスを模索する人は、ブロックチェーンの技術的な特徴よりも、むしろ事例などを注目した方がよいでしょう。どのようなビジネスが提案され、実験されているのかを知ることで、ブロックチェーンを絡める「何か」を見いだせると思います。
本来であれば、他の事例を参考にするのではなく、新しいビジネスを自ら考えた方がよいとは思います。しかし、新しいビジネスの事例などを早め早めにインターネットなどを通じてウオッチしておくと、新しいアイデアが頭に浮かびやすくなるはずです。ただし、注意が必要です。「ブロックチェーンを使っています」とうたっている事例の中には、実質的にはブロックチェーンではないというケースも少なくありません。
ブロックチェーンは様々な分野で活用できる、とても基礎的な技術です。ただし、現時点で実用化しているのは、仮想通貨以外になかなか見当たりません。こうした状況は、インターネットの黎明期に極めてよく似ています。現在、インターネットで様々なサービスが展開されており、インターネットなしでは企業活動や生活などが成り立ちません。では、インターネットが民間で使われ始めた1990年代初頭、現在の状況を想像できた人はどれだけいたでしょうか。
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