斜陽と見られがちな日本の住宅産業、ブロックチェーンで活路を見いだす

 賃貸の契約は非常に煩雑で、入居希望者の方は何度も店頭に足を運び、多くの書類を記入しなければいけません。そうした意味では、フィンテックが一気に進んだ金融業界と似た側面があり、ブロックチェーンを活用して契約を簡素化することで、大きな利用者メリットを実現できる可能性があると感じました。また、賃貸の契約は、物件のオーナーさん、実際に入居するお客様、物件を管理する不動産業者様、そして当社のような不動産会社が絡みます。こうした関係者間でメールやファックスを使って様々な情報をやり取りする機会も多くあります。ブロックチェーンを使って情報を関係者で共有できれば、企業側の効率化も期待できます。検討を進める中で、将来的には他のサービスとの連携まで発展できる可能性も見え、不動産情報管理システムの構築に着手しました。

 議論を始めた当初、「ブロックチェーンは話題性があるけれど、本当に使いものになるのか、メリットはあるのか?」という意見は出ました。しかし、議論を進めるうちに、ブロックチェーンの強みである「契約が容易」「データの共有が容易」「本人認証が容易」といった特徴が、利用者へのサービスや他社・他業種との情報連携を考えた場合、社内にあるデータベースを用いるよりも優れていることが分かりました。さらに将来的なコンソーシアムの立ち上げ、他業種との連携性等の発展性もあり、事業に与えるインパクトはかなり大きいという見方が強まっていきました。

 正直に言いますと、当初は研究テーマの一つとしてシステムの構築を考えていこうと思っていました。しかし、ITのビジネスへの活用については世の中の動きが速くなっています。将来と思っていたことが、すぐに実用化してもおかしくない状況です。ブロックチェーンを使った不動産情報管理システムも例外ではないでしょう。ブロックチェーンについては官民含め様々な検討が既に始まっており、機が熟すのを待つのではなく、ビジョン先行型かもしれませんが、我々が最初に手を挙げて事業化に踏み出すことに決めました。

前向きに考えると、先行することで想像以上のチャンスに誰よりも早く気付くことができる可能性があります。同時に、想定していなかった困難に出くわす可能性もあるかもしれませんが、困難を克服する策をいち早く見いだせるチャンスでもある。いずれにしても、先行者のアドバンテージになるという考えですね。

上田:まさにその通りです。だからこそ、私たちが1番に手を挙げました。当社に限らず、不動産に関わる情報サービスにブロックチェーンを活用しようという動きはあります。金融系でもブロックチェーンを活用する情報サービスが議論されています。もしかするとブロックチェーン以外のシステムが使われる可能性もありますが、様々な業界・業態で今まで以上に情報を共有・活用しようとする動きは今後も話題の中心になるものと考えています。

 世の中の動きが情報の共有という方向に動いていくのであれば、自分たちが真っ先にメリット・デメリットを含めて知見をためておきたいですね。そして、業界をまたいで連携していく流れが強まっていけば、自分たちの知見が大いに生かせると考えています。

既存システムを稼働させながら、新システムを導入するとなると二重投資のようにも見えます。

上田:既存システムを保有しながらブロックチェーンを使うシステムを導入するのですから、見方によっては二重投資に見える部分があるでしょう。ただ、そうすることで既存のシステムを運用する上でマイナスの影響は何もありません。新システムを構築するコストは多少かかるにしても、成果が出れば、リスクを負うことなくすべてリターンとして受け取れます。