異業種と連携、生活関連の様々な情報を一元的に確認

上田:賃貸以外の情報を確認できるようになるのは、次のステップでのプランになります。自社内だけでなく同業他社、さらには異業種とブロックチェーン上で情報共有の連携を広めていきたいと考えています。そうなれば、入居者は自分自身が関わる各種情報を一元的に確認できるようになり、入居者にとっての利便性は一層高まるはずです。
システムの稼働はいつごろですか。
上田:既に当社の物件情報・入居者の情報をブロックチェーン上に載せており、2018年の夏ごろに入居者様への情報提供サービスの利用を開始する予定です。並行して、新規入居契約についてもお客様への案内方法や運用面を詰めているところで、2018年内にはブロックチェーンを使った賃貸契約業務の運用を開始したいと考えています。新規入居契約については、サービス提供地域は当初は首都圏内でパイロット的に進め、徐々にサービス提供地域を広げていく予定です。
新規入居契約については、当初は特定の物件に絞ってのスタートを考えています。利用者にとっても当社にとっても新しい試みなので、一斉に大量の賃貸物件に対してブロックチェーンを使った賃貸契約を運用するのは難しいと考えています。現在、普及に向けたストーリー、運用の始め方について頭をひねっている状況です。最初の段階は利用できる物件は限られるので、実際にブロックチェーンを利用できる物件を管理する不動産業者様と連携して、来店されたり問い合わせいただいたりしたお客様にアプリの利用を案内するなど、お客様にスムーズに利用いただける運用方法を考えているところです。
既存のデータベースにある情報を、ブロックチェーン上に移行していくのですか。
上田:情報を移行するというよりは、現在のデータベースと共存・補完するイメージです。当社では、もともと入居者や物件などの情報を管理するシステムを持っています。それらの情報をすべてブロックチェーン上に移行させるとなると大掛かりになり、時間やコストも膨れ上がってしまいます。従って、既存の情報の一部をブロックチェーン上に移し、かつ新規の情報は既存のシステムとブロックチェーン上の双方に記録していきます。ブロックチェーンに対応した物件であれば、お客様は今まで通り店頭に来ていただいてもいいですし、場合によっては店頭していただかなくても契約を申し込み可能な仕組みを目指しています。
既存の社内データベースには、様々な情報が入っています。これらの情報を、ブロックチェーン上にすべて載せるようにはならないと考えています。例えば、入居者や物件の基本的な情報をブロックチェーン上に載せ、既存の社内システムと連動させながら運用するといった形です。
アプリの利用を勧める際、ユーザーメリットをアピールする必要がありそうです。
上田:最初は入居者向けのアプリから利用を開始することになりますが、アプリ上で本人確認登録を済ませたお客様であれば、例えば、入金履歴等の秘匿性の高い情報もアプリから安全に確認できます。アプリを起動させると、本人確認が済んでいるお客様はメニューが画面上に表示されているイメージになるでしょう。アプリで使えるメニューは、順次増やしていきます。
当社は、ブロックチェーンを活用する不動産情報システムを実証実験ではなく、実用化をしていきます。やるからには、ユーザーメリットをしっかりと打ち出していかねばなりません。システムを構築することは大切ですが、何よりも当社の賃貸物件を取り扱っていただいている不動産業者の皆さんとうまく連動し、お客様にメリットをアピールしていくことが大切と考えています。
そもそも、何がきっかけで、ブロックチェーンを使うことになったのですか。
上田:新規事業を考える過程で、ブロックチェーンを活用する不動産情報システムのアイデアに至りました。日本は人口が減少しています。そのため、住宅産業は斜陽と見られがちです。高度成長期のような人口増加が再び起こることは考えられないし、何の対策をしなくても住宅の販売量が2倍、3倍と増えていくことはまずないでしょう。
ただし、こうした厳しい環境であっても、事業を拡大できる余地はあるはずです。私たちは、そのための新しい事業の軸を考えていました。ただ、いきなり新しいモノが空から降ってくるわけではありません。自分たちのコアコンピタンスである技術力や顧客基盤を使いながら、最新IT(情報技術)を活用し、さらに協業者とアライアンスを組み合わせていくことで新しいアイデアを模索していました。アイデア検討の一環として、斬新なアイデアを持つベンチャー企業の皆さんと意見交換会を開いてきた中で、2年ほど前、今回の不動産情報管理システムの構築で協力するbitFlyerさんに出会いました。同社と意見交換する中で、同社が得意とするブロックチェーンとその有用さを知りました。そして、私たちの取り扱う賃貸事業の中で、ブロックチェーンの活用の可能性が浮かび上がってきたのです。
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