仕事が楽しく、結果も出ているうちは、後任探しのことなど頭に浮かびませんでした。ところがある日、目の前の仕事を100%楽しんでいない自分に気が付いてしまったのです。ちょうど、社員数が350人を超えたくらいのタイミングでした。

 無責任な発言だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私はむしろ、そのような状態でCEOを続ける方が会社のためにならないと考えました。それで、すぐに後任探しを始めたんです。

「解くべきパズル」が変わった

なぜ楽しめなくなったのですか?

リービン:会社のステージが変わったからでしょうね。会社が成長し、規模が大きくなった結果、CEOとして解くべきパズルの種類も変わったのだと思います。

 スタートアップの成長について説明する際、よく使われる「アーリーステージ」と「レイターステージ」という言葉がありますよね。

 一般に、スタートアップは事業の“種”を育てるシードステージを経て、製品開発や初期のマーケティング活動を行うアーリーステージに進んでいきます。これらのステージをうまく乗り越えた企業だけがミドルステージに進み、最後には収益基盤を確立してIPO(株式公開)を準備するレイターステージへと進みます。

 幸いにも、エバーノートもレイターステージまで進むことができました。ただ、このステージで求められる課題解決の質は、それまでと全く違っていました。

 私が得意だったのはアーリーステージで製品を作り育てていくパズルを解くことでした。しかし、レイターステージでは、組織のマネジメントや財務体質の向上といった、管理系のパズルを解くことを要求されました。「レイターステージのパズルを解くのには不向きだ」と悟ったんです。

 パズルの種類が違うと気付いた以上、やるべき仕事はただ一つしかありません。新しいステージでうまく課題を解決できるCEOを探し、私自身と置き換えることでした。

 CEOを引き継ぐことに情熱を持っていて、かつ、レイターステージのパズルを解くのにふさわしい能力を持つ候補者を選ぶのは初めての経験でしたから、多少の不安はありました。

 でも、結果としてクリス・オニールのような好人物に出会えたのは、とても幸運でした。彼は私より優秀で、若い世代のエグゼクティブでもあるので。

エバーノートのCEOを退任した後、別の会社を起業しようとは思わなかったのですか?

リービン:ええ。当時は起業するより、私の経験をアーリーステージにいるさまざまなスタートアップに還元する方が良いと感じていましたから。私は私の得意なパズルを解くことにフルコミットするべきだと考えました。