JETROの防衛装備版を作る

第2は「防衛装備品研究輸出機構(Defense Equipment Research and Transfer Organization=DERTO)」。司令塔が作った政策を実行する部隊です。日本の安全保障産業とその市場とをつなぐ役割を果たす。JETRO(日本貿易振興機構)の防衛装備版と考えると分かりやすいと思います。

 DERTOの役割は2つ。1つは、日本の安全保障産業が製品や技術を国際市場に出すための支援をすること。例えば海外で行われる装備品展示会への出品を支援する。国内で、装備品展示会を主催するなどです。

 海外の展示会などを見て回ると、日本企業のプレゼンスの低さに驚かされます。この点に関しては、DERTOだけでなく、経産省や経団連などさまざまな団体が協力すべきだと思います。

 もう1つは市場の動向を調査研究し、安全保障産業の企業に提供する。「動向」には各国政府や国防機関が取り組む政策の動向把握を含みます。

第3は民間シンクタンクの設立ですね。

佐藤:はい。外交ツールとして防衛装備を使う上で、政府主導に任せるのではなく、政府・企業・学術界との絶え間ない対話が必要です。安全保障産業を保護・育成することを目的とした政策を提言したり、政策と手段の適合性を評価したりする必要があります。米国シンクタンクと同様に、政府から独立した機関として政策提言することもあれば、政府からの委託に応じて適合性を評価することもあるでしょう。

 加えて、関連人材が集まり議論できる「場」としての役割も想定しています。この政策を進めるためには政府のほか、産業側の人、学界の人が集まり議論を交わす必要があります。こうした場を用意することで、産官学の距離を近づけることができるでしょう。防衛装備の世界では、この距離が離れすぎています。現在、こうした場は見当たりません。

第4は。

佐藤:DERTOとは別に、ファンドを設立するよう提言します。商談が成立した後、それを実現するためには資金が必要になります。

オーストラリアの潜水艦の件では、同国が現地生産を希望しました。そうしたケースでは、現地に製造拠点を設けるために莫大な資金が必要になりますね。

佐藤:おっしゃる通りです。そのための資金を提供する。政府と民間の両方から資金を募るのがよいと考えています。ただし、資金の運用において、ただ制度を整備すれば活用を考える企業が出てくると考えるのは楽観的だと思います。

 そして第5は「第三者委員会」。これは、今よりも将来に備えた機関です。防衛装備の海外移転が拡大すると、第三者移転や技術の拡散の問題が浮上します。

日本企業が輸出した装備品が紛争当事国やテロ組織などに渡らないよう、トラッキングが必要になるわけですね。

佐藤:そうです。防衛装備移転三原則は①国連決議で武器輸出が禁止されている国と②国際紛争の当事国への輸出を認めていません。この禁止をきちんと担保するための組織が将来必要になります。この問題には早い段階から取り組む必要があります。

目利き人材には自衛隊OBを

これら5つの機関を機能させ、安全保障産業を活性化するために、いくつかの「考え」を提言しています。一つは人材育成に関するもの。重視すべき人材として「後継者」と「目利き人材」を想定しました。

 日本の安全保障産業は中堅中小企業がその大半を占めており、後継者難に苦しんでいます。彼らに高いモラールを維持してもらうための施策を実行するよう提言します。具体的には品評会や展示会のようなもの――開発した技術を披露し周知できる場――の用意です。懸賞付き技術コンテストなど良いのではないでしょうか。これを実行するためには、政治家、地方自治体、経産省の地方経済産業局、商工会議所などの協力が必要になります。

 「目利き人材」は①装備品の国際市場と技術のニーズを理解し、②日本企業が持っている技術や部品が何に応用できるかを考え、③それらを組み合せてパッケージを提案する力を持つ高感度の人材です。DERTOはもちろん、安全保障産業の企業の中にも、防衛装備品を取り扱う商社にもこうした人々が必要でしょう。

 具体的には自衛隊で働いた経験を持つ人の活用を訴えます。例えば米国では、退役軍人が米ロッキード・マーチンなどの防衛企業に移り、こうした役割を担っています。