ハンドルの中に埋め込まれた新開発の小型モーター。ダイソン氏が指差しているのが、モーターに取り付けられた13枚の羽根

美容は男女問わず重要。高くても買ってくれる

非常に性能は良さそうですが、価格は4万5000円(税別)とヘアドライヤーとしては極めて高価です。本当に売れるのでしょうか。

ダイソン  美容は女性にとっても男性にとっても、とても切実な問題でしょう。高くても、買ってくれると思いますよ。毎日使うものですしね。

今後、美容分野がダイソンの成長をけん引する重要な分野になると?

ダイソン  そうです。美容市場には非常に注目しています。これまでの技術の蓄積を応用して、様々な製品を投入できると考えています。どういった製品を開発していくかは、お話しできませんが(笑)。

今回のヘアドライヤーの開発には、約5000万ポンド(約80億円、1ポンド=160円)を投じたそうですね。

ダイソン  いや、製造ラインなどを含めると、1億ポンド(約160億円)近くは投資しているでしょう。高品質なモーターを製造するたの全自動製造ラインなどに、多額の投資が必要でした。

 それだけ投資した製品を成功させるためにも、まずは、新たな技術を良く理解してくれる日本から発売を開始することにしました。その後は、欧州や米国に展開していくことになるでしょう。

既存のダイソン製品のファンなら、技術力への信頼もあるので高くても買ってくれるかもしれませんね。

ダイソン  既存のダイソン製品のユーザーというより、新しい顧客層にアプローチしたいですね。掃除機ではなく、美容のビジネスを始めたわけですから。ダイソンの掃除機を買ったことがなくても、このヘアドライヤーなら欲しいと言ってくれる人もいるでしょう。まずは、やってみなければ分かりません。

「株主」がいないことがイノベーションを加速する

紙パックを使わないサイクロン式の掃除機を開発して、掃除機市場のリーダー的な存在になりましたが、最近では競合製品も数多く発売されています。美容家電市場に参入するのは、掃除機市場の競争が激しくなり、掃除機分野ではイノベーションの余地も少なくなってきているからでしょうか。

ダイソン  まず、ひとこと言わせてください。紙パックを使わないことが重要なのではなくて、吸引力が衰えないことがダイソンの掃除機の特徴です。多くの会社が我々の技術をコピーしようとしていますが、それは不可能でしょう。我々の技術が今もナンバーワンだと考えています。

 今回はヘアドライヤーを発表しましたが、掃除機でも技術革新の余地はまだまだあります。モーターもバッテリーもよりパワフルになっていきますし、掃除機のヘッド(吸引口)の形状にも新しい技術が次々と開発されています。

どうやってイノベーションを起こし続ける企業文化を維持しているのですか。企業が大きくなっていくと、イノベーションが停滞するケースは数多くあります。日本の電機業界も、例外ではないでしょう。

ダイソン  創業者である私が会社を所有し、他に株主がいないことが、ダイソンのイノベーションを支えています。私自身、エンジニアや科学者と新技術や新商品について議論をし、新しい発明をするように鼓舞しています。私が積極的に関与することで、意思決定も速いですし、それによって新商品を開発するサイクルも速くなっています。今年は、8~9製品を市場に送り出す予定ですが、今後はもっと、その速度を加速していきたいと考えています。

他に株主がいると、イノベーションには不都合ですか。

ダイソン  その可能性はあります。株主は短期的な成果を求めますし、新技術や新商品に利益の多くを再投資することに必ずしも積極的ではありません。

ヘアドライヤーの開発には約4年間を費やしたと聞きました。

ダイソン  そうです。しかし、高速モーターの開発には、これまで18年間を費やしてきています。ヘアドライヤーは単に4年間の開発の結果ではなく、18年間、掃除機などの開発を通じて培われた経験が生きているのです。