企業が大きくなると、どうしてもセクション化が進んで階層ができて、出世欲とか妬みとか出てきてしまう気がしますが。

糸井:それでいて健康な状態というのをもし見つけられるのであれば、セクション化や階層化が進んでもいいと思います。ポイントはどういう体制であるかということ以上に、その体制で健康でいられるかどうかだと思うんです。健康ということは、一定の持続性があって、そこでそれぞれが生き生きと暮らしているかどうか。

 だから、無理のかからない競争社会がもしあり得るのだったら、それでもいい。スポーツのチームはそうですよね。もう僕の代で実現するのは難しい気はしますけど、代が替わったらあるかもしれませんね。

糸井さんが考える会社の適正な規模感はどれくらいですか。

糸井:最初は会社の適切な規模は7人だと言っていた。人間、数字は7つまでしか覚えられないし、(東京の地上波)テレビのチャンネルも7つです。それから14人、21人へと増えていき、ある時期は7人×7グループ、自分を入れて50人がいいと考えていました。今では、アルバイトなどを合わせて100人ぐらい。それでもやりたいことに比べたら、少ないですね。過去に口にした数字はでたらめになってしまったので、最近は「何人が適切だ」って、あまり言わないようにしているんです。

 金魚と金魚鉢じゃないですけれど、人ってスペースの大きさに合わせてサイズが決まる面もあると思います。なので、手狭になるたびにオフィスの引っ越しをしてきました。さらに人数が増えても、今のオフィスのスペースの開放感が維持できている間は大丈夫だと思いますが、それが維持できなくなったら、箱ごと考えなきゃいけませんね。社員の人数ではなく、箱のイメージで考えたいなと思う。今より大きい箱となると、割と近代的なオフィスビルばかりになっちゃうんですよね。それはほぼ日には似合わないなと思います。

上場によって社風や今の事業の良さを崩すことになりませんか。

糸井:僕自身はもともと上場を、企業が強くなるためのエクササイズだと考えていました。受験の世界では、日本で一番難しいのは東京大学です。東大に受かったかどうかで、その先の人生が変わってきますよね。

ほぼ日の上場については反対意見も多かった

難しいから挑戦する価値がある。

糸井:上場を考え始めたのは10年くらい前。ただ2~3年前までは、いつでも引き返すぞ、なんて言っていました。

誰かが背中を押してくれたのですか。

糸井:むしろ上場にトライした多くの人から、「会社がめちゃくちゃになるぞ」と言われました。外から株主が入ってくると人の見方が変わってしまうとか、糸井重里の良さは株式市場とは違うところにあるとか、社風がつまらなくなるとか。皆さん本当に、親身になって心配してくれました。

それでも、思いとどまらなかった。

糸井:紋切り型の批判に聞こえたんでしょうね。上場するとダメになると最初から決めつける人が多くて、疑いが強まったのかもしれません。昔は総会屋がいて大変だったとか、駅のホームの端には立たない方がいいとか、そんな話をされてもね。

 それに、知り合いの上場企業の社長は、誰も悪いことを言わなかった。任天堂の岩田さん(元社長の岩田聡氏)もその一人でしたね。僕が「株主総会って嫌じゃない?」と聞いたら、「いや、確かに根気が求められることもあるけれど、僕は楽な方ですよ」って。それから任天堂を大企業に育てた山内溥さんとのいろんなエピソードを、楽しそうに語ってくれた。任天堂が何かの機械を作ると言ったら、その材料の値段が1万円から100円になるようなことが起こるわけで、岩田さんにのし掛かる責任の重さは、僕とは比べものにならないくらいだったと思いますけどね。