2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向け、「各国をテーマとする振袖をつくり、世界との交流を深めつつ日本文化を世界に発信する」ことを狙う「KIMONO PROJECT(キモノプロジェクト)」が動き出している。推進するのは一般社団法人イマジン・ワンワールド。国内の着物・帯のメーカーや作家らが参画し、既に55カ国分の振袖と帯を完成させた。
米国の振袖には合衆国のコンセプトを表現する50州の州花を、イタリアの振袖にはルネサンス建築様式の代表的なデザインであるアーチ越しに著名な大聖堂や建築物を描くなど、いずれも各国の歴史や特徴を織り込んだ個性豊かなデザイン。2016年に開かれたG7(先進国首脳国会議)で"おもてなし"に活用されるなど、早くも国際舞台で役割を果たしつつある。プロジェクト発案者でイマジン・ワンワールド代表理事を務める高倉慶応氏に話を聞いた。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて世界各国をテーマにした振袖をつくる「キモノプロジェクト」を発案し、推進しています。どんな狙いがありますか。
高倉:着物には見る者を圧倒する力があります。世界中が日本に注目する2020年の東京オリンピック・パラリンピックを機に、日本が誇る伝統工芸文化の素晴らしさを世界に発信したい。各国の着物を着たモデルが手をつなぎ輪になって「世界はひとつ」という平和・友好のメッセージを伝えたい。それがプロジェクトの狙いです。世界196カ国分の振袖と帯をつくることを目標としています。
おかげさまで全国の着物や帯のメーカー、染元、作家、職人らが参画してくださり、既に55カ国分を仕上げました。京都、金沢、東京、博多、沖縄といった全国中の着物の制作者が1つの目的のために一斉にものづくりをするというのは業界でも初めての出来事です。
業界を横断するような一大プロジェクトを仕掛けるまでにはどんないきさつがあったのですか。
高倉:私は福岡県久留米市で呉服店「蝶屋」を営んでいます。キモノプロジェクトを思い立ったのは2013年11月のこと。「一度は世界1のファッションの街で勝負してみたい」とフランス・パリの高級百貨店・プランタンで蝶屋2代目の父がコレクションしていた着物などのショーを開いたのがきっかけです。
せっかくパリでショーを開くので記念に日本とフランスをつなぐような着物を1枚披露しようと新しく振袖をつくりました。茄子紺を基調に左半分は江戸時代の絵師である伊藤若冲の作品を参考にした絵柄を、右半分は欧州で19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアールヌーヴォーの画風を取り入れたデザインに。1900年にパリ万博が開かれた時、着物を出品した染屋さんに依頼してつくってもらいました。
そういう背景や関係を説明したらその場の雰囲気がガラッと変わりまして。それまで、「あぁ日本ね、着物ね、はいはい…」という感じだったパリジェンヌたちが食い入るようにショーを見て、とても喜び、拍手喝采してくれました。この時、日本の伝統文化である着物の持つ力を改めて強く感じたのです。
ちょうど東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したばかりの時期でしたから、「世界各国をテーマに着物をつくったらどの国からも喜ばれる。最高のおもてなしになるに違いない」という発想がわきました。翌年、一般社団法人イマジン・ワンワールドを立ち上げ、早速、着物の制作に取りかかりました。
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