ポンペオ氏のような諜報機関の人間が核に関する交渉をした、と聞くと、米国がリビアと交渉して核開発を放棄させた時のことを思い出します。こういう問題は国務省よりもCIAの方が向いているのでしょうか。

前嶋:米国と北朝鮮には国交がありません。なので、CIAの方が国務省より情報をもっており、交渉を有利に進められるという面があったのかもしれません。

国務省では、幹部職の指名が進まず、人材の枯渇が指摘されています。

前嶋:そうですね。ただ、訪朝した時、ポンペオ氏は次期国務長官に就くことが決まっていました。ポンペオ氏が、同氏に近い人物を指名し、国務省の人事を固めるという情報もあります。なので、今後の米朝交渉は国務省が主導するという前提で、ポンペオ氏は訪朝したのかもしれません。

為替問題の再燃は覚悟を

先ほど、茂木・ライトハイザー新協議の展望に懸念をもたれていました。こちらの協議はどんな展開が予想されるでしょう。

前嶋:麻生・ペンス協議(日米経済対話)も元々、貿易の話を先送りするために作った“誤魔化し”のツールでした。これに苛立ったトランプ大統領がウィリアム・F・ハガティ駐日大使に協議を進めるよう促していたようです。

 茂木・ライトハイザー新協議本格化するのは米朝首脳会談の後でしょうね。

新協議には人事の妙がうかがえます。TPPを所管する茂木氏を充てることで、日本は米国にTPPへの復帰をうながすことができる。

前嶋:そうですね。加えて、新協議の結果は「日米経済対話に報告する」ことになっています。すると、新協議は日米経済対話の下部組織にすぎないことになる。

新協議で日本に不利な結果が出ても、日米経済対話でひっくり返す機会が生じるかもしれないわけですね。

 交渉の議題に載ってくるのは、やはりクルマと農産物でしょうか。

前嶋:米国は成果が分かりやすいところから手を着けるでしょう。まずは牛肉か。為替のように事が大きくなる話は後回しにすると思います。

 牛肉に課されている関税は現在38.5%。TPPでは、段階的に引き下げ最終的に9%にする予定です。米国はTPP並みを要求するでしょう。日本もTPP並みまではのめるのではないでしょうか。同時に、「TPPに入ればさらによいことがあるよ」と米国を説得する機会にすることができます。

 防衛装備品の購入もあります。

 ほかの案件として注目されるは対米直接投資でしょうか。日本は昨年、これを大きく増やしました。企業買収や事業拡大を目的に米国に直接投資した国別の金額で、トランプ政権が発足した17年にはカナダに次ぐ2位に浮上しました。2016年は7位でした。

 米国はメキシコで操業している日本の自動車メーカーの工場を米国に移転するよう求めてくるかもしれません。雇用の増加が目に見え、分かりやすいからです。

日本の自動車メーカーにとっては大問題ですね。

前嶋:はい。それから新幹線の建設も考えられます。これも目に見えて分かりやすいですから。

 インフラ投資は米議会で法案が通らず滞っています。日本が新幹線の建設を提案し、それがてこになってインフラ投資の議論が米国内で進むようになればトランプ大統領にとって良い話になります。

為替の交渉が困難なのは、アベノミクスの進展に影響するからですか。大規模な金融緩和によって円安に振れています。この根底が崩れことになってしまいます。

前嶋:おっしゃるとおりです。

今回は為替に触れずにすみました。今後はどうでしょう。

前嶋:いずれ再燃することを覚悟しておく必要があるでしょうね。