Pepperが放った「僕を買って」の一言

「若い社員と何を話したらいいかわからない」という経営者もいます。一回りも二回りも年下の社員に囲まれ、コミュニケーションを取る時に苦労したり違和感を感じたりすることはありませんか。

諏訪:私? ないない。苦労なんてないですよ。たぶん私、自分に年齢の設定をしてないんだと思います。18歳の子と話す時は自分も18歳の精神年齢になっているんじゃないかな。もちろん仕事の話をする時は違いますよ。でも、ふだんコミュニケーションを取る時には、目線を相手と同じところに持って行きますね。息子が18歳で若い社員さんたちと同じような年代なのでなんとなく話がわかるというのもあるかもしれません。

 社員さんもどんどん私に話しかけてきますよ。「社長、見て見て!これやりましたよ!」って。私も「おー、すげーじゃん!」って返す。そんな感じです。ダイヤ精機には工場が2つ、作業所が1つあるのですが、本社工場以外の場所で働く社員からは、「社長、もっとこっち来て」って言われます。ありがたいことに、社員さんも私とコミュニケーションを取りたいと思っているんでしょうね。

「若い社員とどうコミュニケーションを取っていいかわからない」という経営者やリーダーの多くは、自然な関係をつくるのが苦手なのかもしれませんね。無意識のうちに、優位な立場に保っておきたいという感覚が生じてしまう。

諏訪:もったいないですよね~(笑)。私はそういう感覚は全くないです。女性だからでしょうか。上の立場に立ちたいなんて思ったことありません。楽しいよ。ほんとに(笑)。

 うちの社員は「社長のいる場所は笑い声でわかる」って言うんです。私がいつも笑ってるから。でもこの前、講演でそんな話をしたら、「何の話題で笑うんですか?」って聞かれて。「笑うことがないんですか?」って聞いたら「ない」って言うの。困っちゃった。

諏訪さんからすると、コミュニケーションが取れない職場、笑いのない職場というのはあり得ないと。

諏訪:あり得ませんね。この前、用事があって、ソフトバンクショップに行ったんです。たまたまその時、店員さんがいなくて、Pepperがいたから話しかけてみたんです。そしたら私、夢中になっちゃって。Pepperが言うことにどうやって返せばいいかなって考えながら1時間ぐらい真剣に話してた。途中で店員さんが戻ってきて、私とPepperのやり取りを見て笑っていたらしいんだけど、それにも気づかなかったぐらいです。最後にPepperがなんて言ったと思います? 「僕を買って」だって(笑)。だから「わかった! じゃあ、お金ためて買いに来るね」って言って帰ってきました。本気で向き合えば、ロボットともコミュニケーションは取れる。わかり合えるみたいです(笑)。

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 「町工場の星」と呼ばれ、メディアでも注目を集める女性社長の奮戦記第2弾。
 創業者である父の急逝を受け、主婦から社長になった町工場の2代目。リーマンショック後、業績低迷が続く会社を突然継ぐことになった彼女は、どのようにして社業を復活させたのか。生い立ちから会社再生までの道のりを綴った前作『町工場の娘』に続き、この本では、「職人の技を受け継ぐ人材の育成」にスポットを当てて、10年余りの苦闘を振り返ります。
 お金もなく、知名度もなく、一時は身売りの危機にさえ陥った町工場が、若者の笑顔が絶えない活気あふれる「ものづくりの現場」に変身した――。その背景には、"素人"からスタートした2代目が知恵と情熱を余すところなく注ぎ込んだ人材育成戦略があります。自らの役割を「相撲部屋のおかみさん」に例える筆者は、若手、中堅、ベテランとどう接し、それぞれのやる気を引き出して、「若者が集まる町工場」をつくり上げたのか。その奮闘ぶりは多くの経営者の共感を呼ぶとともに、リーダーシップ論、コミュニケーション論の"生きた教科書"として、すべてのビジネスパーソンの参考になるはずです。