人材育成は「スマート」「効率的」にはできない

新人との交換日記について、他社の経営者やリーダーから「真似しています」「やってみます」と言われることが多いとのことですが、今のお話を聞くと、単に新人とノートをやり取りするという形だけをなぞっても意味がないとわかります。交換日記の本当の活用はそこから。ノートを読み解き、現場のリーダーたちと一緒になって日々動く必要がある。多忙な経営者が、それだけの手間や時間をかけてこそ、成果が得られるのですね。

諏訪:本気で人材を育成したいと思うのなら、それぐらいの手間や時間はかけないと。人材育成はスマートにやろうとしたり効率的に済ませようとしてできるものではありません。フェイストゥフェイスで直接やりとりできるのが町工場の醍醐味。私はそれを生かしながら人材を育てていきたいと思っています。

著書『ザ・町工場』で、諏訪さんはコミュニケーションを人材育成の軸に据えていると記しています。社員同士、また諏訪さんと社員の間で密にコミュニケーションを取り合い、新人を一人前に育てていこうとしているということですが、あえて交換日記を活用しなくても、ふだんのコミュニケーションの中で社員の性格や資質を把握することはできませんか。

諏訪:それはできないですね。私も社員さんとなるべく話をするようにしていますけど、時間で言ったら1人当たりせいぜい1日10分弱。その中で性格をつかみ、それに合わせてカスタマイズした教育方針を決めていくというのは難しいです。自由なスタイルで書く交換日記だからこそ見えてくる性格や気質があります。交換日記を活用し、社員の性格や資質に合った教育をしてきたことが、ダイヤ精機の社員定着率の高さにつながったのだと思います。

それほど効果のある交換日記ですが、1カ月で止めてしまうそうですね。もったいない気もします。

諏訪:もったいなくはないですよ、全然。長く続けすぎると、社員は「社長に監視されている」とストレスに感じたり、面倒な気持ちが生じたり、デメリットも出てきますから。それに1カ月たつと、良い意味で会社の仕事に慣れるので、新人の素の個性が見えにくくなります。1カ月が性格や資質を見るのにちょうど良い期間です。

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