北朝鮮の核開発をやめさせなければ先制攻撃も…

(写真:大槻純一)

今回のミサイル攻撃は米中首脳会談のさなかに実行されました。これはどんな意味を持つのでしょう。

川上:とても偶然とは思えません。北朝鮮を巡って、米国が中国にメッセージを送ったのでしょう。「北朝鮮が進める核開発を抑えるよう真剣に取り組め。そうでないと北朝鮮の核施設を先制攻撃することも辞さない」。米中会談は表面的には良好な関係を強調しましたが、カモフラージュである可能性が高いと思います。

 先制攻撃では、約700あるとされる米国の攻撃ターゲット――北朝鮮の核施設を含むWMD(大量破壊兵器)――のすべてを破壊する必要はありません。国防長官(当時)だったロバート・マクナマラが米ソ冷戦時代に行なった試算によると、全体の7割を破壊すれば実質的に機能停止に追い込むことができるそうです。金正恩委員長を探し出して殺害しなくても、政権はがたがたになるでしょう。

 そして、攻撃した後、米国はすぐに撤退して後を中国に託す。

え、北朝鮮に新たな親中政権が出来上がるのを容認するということですか。つまり、金王朝ではなく、核兵器を保有しないのであれば、親中政権でもかまわない、と。

川上:そういうことです。

 ただし、このようなディールは今の習近平政権にとって好ましいことではありません。彼らが望むのは現状維持です。少なくとも、今秋に控える共産党大会が終わるまでは、余計なディールはしたくない。

 仮に米国が北朝鮮の核施設を先制攻撃して、金正恩政権を倒した場合、最も大変になるのは日本です。米国が、北朝鮮が保有する核兵器の7割を破壊したとしても3割は残ります。それが日本にある米軍基地に向かって発射されることを覚悟しておく必要がある。

トランプ政権は軍人主導になった

 さらに朝鮮半島の北半分に核を持たない親中政権ができるとは限りません。核を保有する親中政権が成立する可能性だって皆無ではないのです。親中か親米か、核保有か核なしか、選択肢は4通りあるわけですから。

それにしても不思議なのは、北朝鮮の核問題が突然、脚光を浴び始めたことです。オバマ政権の時代には、戦略的忍耐という政策の下で、北朝鮮を無視してきました。

川上:それはトランプ政権が軍人が主導する政権になったからです。オバマ政権が北朝鮮に対して何もしないことに軍は非常に怒っていました。

4月5日に、トランプ大統領はスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問を米国家安全保障会議(NSC)のメンバーから外しました。それと関係があるのでしょうか。

川上:まさにそれです。バノン氏が抜け、国家安全保障担当の大統領補佐官であるハーバート・マクマスター氏とジェームズ・マティス国防長官という二人の軍人が仕切る体制に変わりました。

 バノン氏が抜けたことで、軍人コンビに加えて、クシュナー氏の力が増しています。クシュナーを軍が取り込んだという情報もあります。先ほど、中東におけるイランの力を排除する可能性を指摘した背景には、同氏の存在があります。

 習近平政権は、このクシュナー氏にだいぶ接近しているようですね。同氏をして、北朝鮮に集中しそうな米軍のパワーを中東に振り向けさせることに成功したという見方もあります。