少子高齢化・人口減少が進む日本では「働き方改革」の必要性が真剣に叫ばれている。仕事の質の向上や効率化などを図る解決法の一つは、女性人材の“真の活用”だともいわれている。その女性人材活用の本質などを議論する「ジェンダーサミット10(GS10)」が5月下旬に東京都内で開催される。
GS10で議論する中身は「ジェンダーとダイバーシティの推進を通して、科学とイノベーションの質を向上させることにある」と、GS10を主催する科学技術振興機構(JST)の濱口道成理事長は力説する。アジアでは二番目となるジェンダーサミットを日本で開催する意義や意味などを、GS10のChair(委員長)を務めるJSTの渡辺美代子副理事・ダイバーシティ推進室長に読み解いてもらった。
今回、GS10を日本で主催する狙いは。

科学技術振興機構の副理事、科学コミュニケーションセンター長、ダイバーシティ推進室長。東芝の研究開発センターで半導体の研究開発を担当。日本物理学会や応用物理学会の男女共同参画連絡会代表や女性技術者フォーラム運営委員長などを歴任。2013年4月に科学技術振興機構の研究開発戦略センターに出向し、その後、移籍して2013年12月に新設されたダイバーシティ推進室室長に就任。2014年に副理事に。
渡辺:今回のGS10のテーマは「ジェンダーとダイバーシティの推進を通じた科学とイノベーションの向上」です。
実際に「ジェンダーとダイバーシティの推進」という言葉を聞くと、日本の社会で活躍されている多くの方(多くは男性)は、残念ながら「社会への男女の共同参画の推進だ」と考えてしまう方が多いようです。つまり、日本での女性の社会進出を加速する動きだと考えている方が多いのです。
実は、真のジェンダーとは「社会的につくり出された男女の差異」という視点から、「男女の性差を重要な因子ととらえて、その男女の性の差があることを前提とした科学技術の進め方」という考え方に移行しています。つまり、現在進行中のイノベーションの中身は、男女の性の差を前提としたモノの見方や考え、製品・サービスの中身の質などの向上に移っているのです。
男女の性の差を前提とした科学技術の進め方とは、具体的にはどんなことを指すのですか
渡辺:ジェンダーの世界的権威である米国スタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授は、男女の性差があることを前提とした研究開発の進め方と、それによるイノベーションの進め方である「ジェンダー・イノベーションの見方」を2005年ごろから体系化して提唱し、分かりやすく解説されています。
例えば、創薬分野の研究開発では、これまではその研究開発にはオスの動物を使うことが多かったために、開発された創薬は、女性には効果の低いものが開発されることがありました。その理由は、男性(オス)と違って、女性には月経があり、また妊娠するなどの身体の変化があるからです。オスの動物を使うことでは、こうした女性の身体の変化を考慮しないものになります。このため、最近はこのやり方を修正し始めているのです。
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