訪日中国人客はこれからも増える

親会社のANAHDが1月末に発表した2016~2020年の中期経営計画を見ると、バニラエアは今後、より国際線を強化するような印象を受けました。

石井:バニラエアは当初から売り上げの7割を国際線で稼ぐという計画でスタートしています。現在は香港と台湾の台北、高雄の3都市に就航していますが、これだけでも、売り上げの半分、月によっては6割を稼いでいます。今後はさらに国際線の路線展開のスピードが速くなりますから、売上高に占める国際線の比重も高まるようになるでしょうね。

中国の内陸部に飛ばしたり、台湾からベトナムに足を伸ばすこともあるのでしょうか。

石井:現在は、日本から4時間半で飛べる都市全てを検討しています。現在、成田空港には中国19都市から飛行機が飛んできています。その中には私が聞いたことのないような都市もあるわけです。けれど、旺盛な需要はある。バニラエアに対しても、中国のさまざまな都市から飛ばしてほしいというオファーが寄せられます。特に中国は、ホワイトスポット(競合LCCなどが出ていない空白地帯)でもありますから、挑戦する価値はあると思います。

国際線を強化し、海外の利用者を取り込む中で、バニラエアの強みは何でしょうか。

石井:ひと言で言えば、「日本品質」でしょうね。私は日本で品質ナンバーワンのLCCになれば、世界品質で見ても十分誇れるLCCになれると思っています。特に我々は、ANAHDの100%子会社のLCCですから信用度が高い。ANAHDが培ってきた信頼や、日本のLCCであるという点を全面的にアピールしていきたいですね。

燃油安は追い風ですが、一方で中国の経済減速の影響を受けることはないのでしょうか。

石井:中国経済の減速は、我々にとっては追い風だと思っています。不況の方が、LCCが選択肢に入りやすくなるでしょうから。私は中国経済の減速に対して、あまり悲観的な見方はしていません。というのも、どんなに経済が減速したとしても、中国から日本に来ているのはわずか400万人しかいません。「爆買い」は減るかもしれませんが、それでも海外旅行を楽しむ中国人は増えるはずです。日本を訪れる400万人の中国人は、すぐに500万人や600万人に増えるはずです。景気の冷え込みよりも私が危惧しているのは、尖閣諸島や南シナ海などの地政学的なリスクですね。

 訪日外国人が増えているのは追い風だけれど、同時に懸念しているのが日本側の受け入れ態勢です。空港だけではなく電車やバスといった2次交通や、ホテルなど宿泊施設の整備ができるのか。キャパシティだけではなく、言語対応などにも課題は残ります。2020年に向けて訪日外国人4000万人を目指そうとしているのだから、こうした面もきちんと整備しなくてはならないでしょうね。

空港関連コストが足かせ

その中で、日本のLCCの役割も変わっていくのでしょうか。

石井:繰り返しますが、これからは海外のLCCと競争しなくてはなりません。そこで強みを磨く必要がある。そのための足かせとなる1つの要因がコスト構造です。

 成田空港ではLCC向けのターミナル3がオープンして、随分良くなったと思います。それまではターミナルビルの一角を間借りしているような感じでしたから。ただ、LCC向けターミナルが完成した後もまだまだ課題は残っています。

 例えばターミナルビルにつながる駐機場の数が不十分なために、ターミナルから離れた場所に飛行機を駐機させ、そこまでバスでお客様を案内しなくてはなりません。バスを使う分コストはかかります。十分な数の駐機場を作れば、こうした問題は解決されるはずでしょう。

 また成田空港の場合、新規路線を増やしたら着陸料を減額するといった制度を、全ての航空会社に適応しています。けれど我々のようなLCCの場合、大手航空会社とは違って、安い運賃で新たな需要を生み出し、何とか商売をしています。

 それなのに、こうした新たな需要を生んでいる我々に対して、何かの優遇があるわけではありません。むしろ今の制度では、お客様が空港を多く利用するほど、施設使用料が上がるわけです。お客様を呼べば呼ぶほど、我々が空港に支払う料金が高くなる。これは我々のような航空会社を、コストセンターとしてしか見ていないからでしょう。

 空港に多くのお客様が足を運ぶようになれば、食事や買い物をしてお金を落とすはずです。つまり集客力の高い航空会社はプロフィットセンターであり、多くお客様を集めれば、それだけのインセンティブがあってもいいと思うのです。

 LCCがコスト競争力を高めて、空港側も利用者が増えてもうかる。空港だけではありません。就航先の都市などとも、今後はウィン・ウィンの関係を強化していけるようになれば、LCCはさらに飛躍できると思っています。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。