関西国際空港を拠点とするLCCのピーチ・アビエーションが、就航からわずか1年で黒字を達成したのに対し、成田空港を拠点とするバニラエアやジェットスター・ジャパンは苦戦が続いてきた。だがようやく、長いトンネルを抜けつつあるようだ。利用者が着実に増え、バニラエアは2016年3月期の決算で初の営業黒字を達成したようだ。どのように壁を乗り越えてきたのか。就航当初からバニラエアの経営を担い、4月に会長に就いた石井知祥氏に話を聞いた。(聞き手は日野なおみ)

2015年度の決算では、ようやく営業黒字を達成したようです。
石井会長(以下、石井):私が2013年8月、社長としてこちらに来た時、社名はまだエアアジア・ジャパンでした。数字の悪い中で2013年10月にエアアジア・ジャパンとしての運航を終え、同年12月にバニラエアとしての運航を始めた。
就航当初こそ“ご祝儀利用”で搭乗率も良かったのだけれど、その後は毎月赤字で、そうこうしている間に、2014年6月にはパイロット不足に陥って大量に減便せざるをえなくなった。当時は毎月、億単位の赤字を垂れ流しながら、本当にこのLCCビジネスに事業性はあるのかと考えていました。
そのような状況から、ようやく営業黒字にこぎつけた。何が変わったのでしょう。
石井:一番大きいのは売り方を学んだことです。競合相手の料金の動向や需要動向を見極めながら、収益性を最大限高めていく。こうしたマネジメントが何とかできるようになってきました。LCCの基本である飛行機の稼働率も上がり、いかにコストを下げるかということも、学んできました。こうしたことが、黒字化の背景にはあります。
LCCは、どうしても欠航や遅延が多いような印象を抱かれがちです。ですから定時性や運航品質、就航率については、きちっと上げていかなくてはならないと思っていました。そこで目標を立てたんですね。就航率は99%以上を目指そうと。今年2月には実際、就航率は99%を上回りました。
定時出発率の目標は85%以上ですが、今年2月までの累計は83%。国際線を展開すると、どうしても空港が込み合うなどの都合で、時間通りに着陸できなかったりしてしまう。ですがこちらも早々に目標を達成したいと思います。
バニラエアでは毎月、就航率や定時出発率の実績を発表しています。こういうデータを開示しながら、利用者の信頼を勝ち取って行きたいですね。
搭乗率も上がっているようです。
石井:搭乗率は通年でも85%に達しています。目標は89%なのでまだまだですが、それでも通年で高い搭乗率になってきたと思います。運航の初年度や次年度は運賃を安くしても、なかなかお客様に乗っていただけなかったですから。
バニラエアの認知度が高まってきたということでしょうか。
石井:認知度はまだまだ足りないけれど、しっかりと運航を続けた結果だと思っています。けん引したのは1日4往復を飛ばす成田~台北線と、1日7往復を飛ばす成田~札幌線です。特に成田~札幌線はこれだけ飛ばしているのに、搭乗率が平均90%くらいと健闘しています。
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