具体的にどのような手法でESGを組み込んでいますか。

メイサー:4つの手法でESGを組み込んでいます。第1は企業と対話して働き掛ける「エンゲージメント」です。業績の悪い企業や、ESGで著しく問題を抱えている企業を選び、働き掛けを行う手法です。株主総会では議決権も積極的に行使しています。例えば、取締役の人事や問題解決法について投票する前に、私たちは調査結果をウェブ上でも公開して世界に前もって知らせるという方法を採っています。多くの投資家はここまで投資先の情報を精査して投票していないでしょう。しかし、カルパースはそうすることが企業の利益と株主の利益の両方を守ることにつながると考えています。

 第2は企業に対して意見を述べる「アドボカシー」です。第3は投資ポートフォリオ全体にESGのことを加味する「ESGインテグレーション」です。2750億ドルの6割はカルパースで運用していますが、4割は外部に運用を委託しています。カルパースには400人の投資マネジャーがいます。彼らは自らで資金を運用するだけではなく、委託先の運用方法やプロセスも監督しており、そうすることでESGインテグレーションを実現しています。

 第4はパートナーとの協働です。他の年金基金など70のアセットオーナーとともに、NGO(非政府組織)のセリーズが主導する「カーボン・アセット・リスク・イニシアティブ」に参加しています。このイニシアティブでは、化石燃料に対する政府の規制や競争力などの動向を踏まえた、化石燃料関連企業の価値毀損リスクなどの情報が得られます。その情報を基に、45社の化石燃料関連企業に対して、気候変動リスクを分析して経営計画に反映させるように働き掛けをしています。BPもシェルも対応してくれています。

 

最近、化石燃料関連企業からの投資を引きあげる「ダイベストメント」が欧米で広がっていますね。カルパースもダイベストしていますか。

メイサー:投資方法としてダイベストは理想的ではないと私たちは考えています。カリフォルニア州には、収入の50%以上を石炭関連事業から得ている企業へのダイベストを奨励する法律があります。こうした企業はカルパースの投資ポートフォリオで2億ドルを占めています。しかし、投資から撤退すれば私たちの声を届けられなくなります。カルパースは対話による働き掛けで企業を変えていくという方針を採っています。受託者責任を考えた際に適切だと判断した時にだけ、ダイベストするようにしています。

ESGを組み込むことで、逆に運用成績にマイナスの影響はないのでしょうか。

メイサー:先ほども話したように、私たちは年率7.5%という高いリターンを目標にしています。私たちは銘柄を自ら選ぶアクティブ運用をしています。それにESGを組み込むことで、企業の倒産などのリスクを減らし、逆に機会を広げることにつながると考えています。財務パフォーマンスもしっかり見て投資し、そこにESGを加味することでさらにパフォーマンスを高めています。特にここ10年は、プライベート・エクイティのリターンが13%強に上っており、それがプラスに働いています。